ビューポイント No.2024-013 激化する外国人労働者獲得競争 ―賃上げに向け労働生産性の一段の引き上げが不可欠― 2024年09月06日 牧田健わが国の中期的な経済成長は、外国人労働者の安定的な増加を前提にしているが、先行き世界的な人口増加ペースの鈍化が見込まれるなか、その実現は予断を許さない。2010 年代半ば以降、わが国で人口減少に伴う人手不足が本格化するなか、外国人労働者は増加している。しかし、台湾、韓国でも生産年齢人口が減少しており、今後両国でも外国人労働者に対する需要が強まっていく公算が大きい。一方、わが国にとって外国人労働者の主要な送出国である東南アジアでは、2040 年代以降生産年齢人口が減少する可能性が高く、東アジアでの外国人労働者の獲得競争は一段の激化が避けられない。現状のままでは、2040 年には約 100 万人の外国人労働者が不足するとみられ、経済成長が抑制される恐れがある。外国人労働者の増加については、さまざまな批判があるものの、経済活動における外国人労働者への依存度はますます大きくなっており、日本人の人手が集まりにくい産業を外国人労働者が支えているのが実態である。なかでも、日常生活に不可欠な業務に従事する労働者(キーワーカー)は賃金水準が往々にして低く、世界的にみても所得水準が高まるほど、外国人比率が高まる傾向にあり、外国人労働者が増えなければ、日常生活に支障をきたす恐れがある。外国人労働者への依存度を低下させるには、①高齢者・女性の就労促進、②「労働生産性」の一段の引き上げが欠かせない。そのために、労働市場や社会保障制度、各種規制の改革、DX推進、成長産業への雇用シフト促進などをこれまで以上に取り組む必要がある。しかし、これまでの必ずしも十分でないわが国の取り組み姿勢を踏まえると、当面は外国人労働者に引き続き頼らざるをえないのが実情だろう。外国人労働者獲得競争が今後一段と激化するのが避けられないなか、まず、所得環境の改善が不可欠である。わが国は最低賃金、平均賃金ともに低く、経済体質の改善を進めなければならない。また、供給先を東南アジアだけでなく、人口動態面で供給余力のある南アジアやアフリカの国々まで広げていく必要がある。賃金面での優位性を失うなか、外国人労働者に対する不寛容な政策も改めていく必要がある。外国人労働者の大幅な増加を受け入れるか否かに関わらず、わが国は労働生産性の一段の上昇に向けた国内の社会・経済構造の抜本的な改革が必要な状況に変わりはなく、具体策に早急に取り組まなければならない。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)