リサーチ・アイ No.2024-046 逆効果のリスクはらむ中国の婚姻登記条例改正案 ―少子化の進行や不動産市場の悪化を招く恐れ ― 2024年08月29日 呉子婧中国では、少子化に歯止めがかからない状況。出生数は、ピークだった2016年の1786万人から、2023年には902万人と約半分へ急減。少子化に危機感を強めた政府は、2021年に産児制限を事実上廃止した後、出産奨励を目的とした補助金を拠出。さらに、本年8月には婚姻登記条例を改正し、結婚手続きの簡素化と離婚手続きの厳格化を発表。しかし、この改正案は以下2つの問題を招く可能性あり。第1に、婚姻率上昇の狙いに反して、逆に低下してしまうリスク。離婚手続きが厳格化されることで、未婚者は結婚後の関係悪化を恐れて、婚姻を躊躇する展開が懸念。実際、若者は改正案に強く反発。中国では、近年、婚姻率や合計特殊出生率が急低下しており、改正案がこうした傾向に拍車をかける恐れ。第2に、不動産市場の悪化。中国では、結婚前に男性がマイホームを所有していない場合、相手女性の親の許可が下りない慣行(丈母娘经济)が残存。両親が結婚に反対し、手続きが進まないように必要書類を渡さないケースも多発。今回の改正により、結婚手続きが簡素化されれば、両親の同意を得ずに結婚が可能となるため、この慣行は廃れる可能性あり。これは結婚に伴う住宅需要を減少させ、不況下にある不動産市場を一段と悪化させる恐れ。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)