リサーチ・アイ No.2024-037 中国で長引く低インフレ ― 過熱する値下げ競争がデフレを招く恐れも ― 2024年07月29日 呉子婧中国の低インフレが長期化。6月の消費者物価指数(CPI)は総合で前年同月比+0.2%とゼロ付近で推移し、コアも同+0.6%と4ヵ月連続でゼロ%台。低インフレの背景は、以下の2点。これらの傾向が続けば、デフレが定着する可能性も。第1に、消費者の低価格志向。消費者信頼感指数は足元にかけて低迷しており、とくに失業問題が深刻化する若年層でその傾向が顕著。中国メディアが実施したアンケート調査では、若年層のうち6割以上が買い物の際に常に価格比較を行い、低価格を追求。贅沢をやめて倹約に励む「消費降級」現象が広がるなか、小売業の値下げ競争が激化しており、電子商取引(EC)サイトでは取引単価が大幅な下落傾向。アリババなど大手ECサイトだけでなく、小紅書、抖音(中国版のTikTok)、快手などのSNSプラットフォームがメーカー直販の低価格商品や強力なプロモーションで市場シェアを急拡大するなど業界構造にも変化。第2に、EV関連で顕著な供給過剰と価格競争。政府支援策によって中国ではEV車が急速に普及しており、企業の新規参入や生産能力の拡大が進行。需要を上回って供給が増加しており、メーカー間でシェア獲得に向けた価格競争が激化。ディーラーや販売店の間でも競争が強まっており、「価格倒掛(ディーラーや販売店での販売価格がメーカーの最低出荷価格を下回る現象)」が発生。値下げ競争によるマージンの縮小は、賃金の抑制などを通じて、デフレ傾向をさらに加速させる恐れ。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)