リサーチ・フォーカス No.2024-021 増加する「身寄り」のない高齢者-頼れる親族がいない高齢者に関する試算- 2024年07月23日 岡元真希子未婚化や家族・親族関係の希薄化などにより、頼れる親族がいない人が増加している。しかし、公的制度・社会保障給付や民間取引において、親族がいることを前提とした制度や商習慣が浸透しているため、頼れる親族のいない人は不利な立場に置かれやすい。このことが、いわゆる「身寄り問題」という社会課題として認識されるようになったものの、「身寄り」に関する明確な定義がなく、その輪郭は曖昧なため、本稿でその問題の概要を整理した。文献調査に基づき、「身寄り」については、民法の扶養義務を根拠とした「配偶者・直系血族・兄弟姉妹」を基本として、より狭い「配偶者・子・孫」、より広い「三親等内の親族」という三段階に整理することができる。高齢者への支援の可能性に照らすと、「身寄りがいない」状態は、「子がいない」「子・配偶者ともいない」「三親等内の親族がいない」に分けて捉えることが現実的である。2024 年から 2050 年までの間に、子のいない高齢者は 459 万人(人口の 12.7%)から 1,032 万人(同 26.5%)に増加すると見込まれる。子・配偶者ともいない高齢者は 371 万人(10.3%)から 834 万人(21.4%)に、三親等内の親族がいない高齢者は286 万人(同 8%)から 448 万人(同 11%)に、それぞれ増加すると見込まれる。また、親族がいても支援を期待できるとは限らず、「いざというときのお金の援助」を頼れる相手がいない高齢者は 2024 年時点で 790 万人規模と推計される。「身寄り」には支払い保証や緊急対応の役割に加え、高齢者の支援では、入院・入所の際の規則遵守の約束、退院・退所対応、情報伝達、死後対応が求められることが多い。このような一連の支援には相応の体力・判断力・意欲、経済力が必要で、現実的には引き受け手が限られる。親族に求める役割を明確化したり最小限にすることによって、高齢あるいは遠縁の親族まで引き受け手の幅を広げるとともに、親族以外による支援が可能になるよう制度を見直していく必要がある。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)