コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経済・政策レポート

ビューポイント No.2024-009

シニア就労拡大への課題

2024年06月25日 牧田健


わが国では、近年世界的にみて高いシニアの労働参加率がさらに上昇している。その背景には、公的年金の低さに加え、「健康」や「人間的なつながり」を理由としたわが国シニアの就業意欲の高さ、世界第一位の健康寿命の長さが指摘できる。

インフレの定着により、シニアを取り巻く所得環境は今後厳しさを増していく一方で、人手不足の深刻化により就労環境は今後改善が期待される。政府もシニア就労の環境整備を着実に進めており、先行きシニアの労働参加率をもう一段高めていくことは可能だろう。

年金受給開始年齢繰り下げに伴い年金受給額が増額されるという現行の年金制度のもと、健康寿命の延伸があれば、一定の労働参加率の上昇は期待できる。しかし、60 歳以降も働いているシニアの満足度は、賃金をはじめ必ずしも高くなく、労働者の能力がフルに発揮されない可能性がある。

まず、わが国では、60 歳超での賃金低下が著しい。また、60 歳代以降、これまで従事していた職種のニーズが減るなかで、多くのシニアが自らのスキルを活かせない職務に取り組まざるを得なくなっている。したがって、この低賃金の問題とスキルを活かせないという問題に対処していく必要がある。

年功序列型賃金は国民の希望と必ずしも合致しなくなり、企業サイドでもその弊害が生じるなか、これまでの雇用・賃金システムの抜本的な見直しが不可欠になっている。シニア世代においては、働き方・生き方は現役世代以上に多様化していく。定年後再雇用時の一律での賃下げではなく、働き方に関する複数の選択肢を提供していくと同時に、賃金水準を生産性に見合う水準まで底上げしていくことが求められる。

しかし、その実現のためのインフラが整備されていない。まず、シニア向けの外部労働市場が必ずしも整備されていない。そもそもスキルを計測する市場はなく、スキルをブラッシュアップしていく機会も限られている。この打開に向け、わが国の雇用・賃金システムそのものを、少なくとも一定の年齢層以上についてはできるだけ早期にジョブ型に変えて、労働市場の流動性を高めていく必要がある。また、必要以上の所得増加を阻む在職老齢年金制度も廃止する必要がある。

高齢になっても働くことが当たり前の社会となっていかざるをえないなか、各人それぞれが納得した働き方・賃金のもとで最大のパフォーマンスを発揮していくことが欠かせない。そのため、さまざまな雇用・賃金システムを柔軟に組み合わせていく必要があるだろう。

(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)
経済・政策レポート
経済・政策レポート一覧

テーマ別

経済分析・政策提言

景気・相場展望

論文

スペシャルコラム

YouTube

調査部X(旧Twitter)

経済・政策情報
メールマガジン

レポートに関する
お問い合わせ