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JRIレビュー Vol.4,No.115

時間外労働の上限規制と企業の生産性

2024年05月24日 安井洋輔


2024年4月より、自動車運転の業務や建設事業に対しても時間外労働の上限規制が適用される。このため、運輸業・郵便業や建設業では、生産下振れを懸念する向きが多い。もっとも、労働時間が減少しても、イノベーションにより生産性を高めることで、生産量を維持できる可能性も考えられる。そこで本稿では、すでに上限規制が適用されている業種に属する企業において、上限規制の適用によって一般労働者の労働時間や生産性の伸びがどのように変化したのかを分析した。

その結果、規制適用前に一般労働者の平均月間労働時間が上限(205時間)に近かった業種・規模に属する企業ほど、上限規制の適用を受けて、一般労働者の労働時間をより多く削減する傾向がみられた。つまり、長時間労働が顕著であった企業ほど、上限規制の影響を強く受けたとみられる。

また、上限規制は、企業の生産性の伸びを短期的には悪化させるものの、中・長期的にはむしろ改善させるといった
Jカーブ効果があることが分かった。この背景には、企業は、ソフトウェア投資を増やすなか、短期的にはそれに伴う事業・業務の見直しや労働者のリスキリング時間の確保によって生産活動に支障を来すものの、その後は業務の効率化・省力化によって生産性が高まったことが考えられる。

したがって、運輸業・郵便業や建設業においても、今後、経済活動を低迷させないためには、ソフトウェア投資によって生産性を高めていくことが必要である。もっとも、建設業では相応にデジタル化が進んでいる一方、運輸業・郵便業では、他業種よりもIT活用に馴染みのない高齢労働者が多いことも影響してか、デジタル化に遅れがみられる。このため、運輸業・郵便業が表面的にデジタル化に取り組もうとしても所期の目的を達成できない可能性が高い。したがって、同業種で生産性向上を図るには、ハードウェアの整備や企業連携等に加え、政府・自治体や商工会議所、金融機関など同業種を取り巻く関係機関が、それぞれの持ち味を生かしつつ、デジタル化を積極的に支援していくことが求められる。

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