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リサーチ・フォーカス No.2024-009

【サプライチェーン再編シリーズ①】
中国過剰生産への先進国対応に落とし穴 ―新エネ分野の供給網再編、脱炭素と脱中国依存の両立は困難―

2024年05月22日 野木森稔佐野淳也


西側先進国は、中国が新エネルギー関連製品を過剰に生産しているとの批判を強めている。米国はダンピングとして批判するにとどまらず、制裁関税を導入しているほか、欧州や日本もこの問題に対し強硬な措置を打ち出していく可能性がある。こうした一連の動きは、先進国が脱炭素と脱中国依存という目標に向け、自国産業を育成し、供給網の強靭化や再編を進めていこうという意志を示すものである。これを別の角度から見れば、中国と同様に、先進国は自由主義ではなく保護主義を意識した政策に一段と比重を置いているといえる。

しかし、こうした先進国の方針は経済合理性を欠いており、新エネ分野での供給網再編を成功に導くことは難しい。とくに、①中国の過剰生産は止められそうにないこと、②中国は新エネ分野で高いコスト競争力を持つこと、に注意を要する。対中関税を課しても先進国以外で中国製品の普及は続くほか、迂回輸出などを通じた先進国への流入も完全に止められるわけでない。また、先進国も中国と同様に補助金による産業育成策を実施しているものの、新エネ分野での競争力の差はまだ大きい。先進国が自前で中国による供給を代替するのは容易ではない。

先進国は、強引な政策で新エネ分野の供給網の構造変革を進め、安価な中国製品を放棄する場合、インフレなどを通じた景気リスクを抱えることを覚悟しなければならないだろう。

そうしたリスクを低減するために先進国が採るべき政策は、①新興国との連携、②高基準な新エネ製品の供給網の構築、であると考えられる。具体的には、先進国は中国以外の国・地域へ分散して投資する経営戦略「チャイナ・プラスワン」を進め、その主な投資先であるASEANやインドとの連携を図ることでコスト競争力を高める方策である。また、中国が製造するEVは、その生産過程で大きな環境負荷を伴っているとされる。先進国と有力新興国との連携で新エネ製品が高い環境基準、さらには労働基準なども含めたESG基準に準拠した供給網で製造されることになれば、公正なグローバルな市場の形成を強力に推進できよう。

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