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RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.24,No.93

インドによるデジタル公共インフラの海外展開

2024年05月10日 岩崎薫里


インド政府は、個人識別番号Aadhaarを導入するとともに、それをベースに①確実な本人確認、②データの管理と活用、③電子決済の推進、を目的とする様々な機能を開発し、India Stackとして官民に広く開放してきた。その結果、インド社会・経済のデジタル化が大きく前進したことから、インド政府は次のステップとしてそれらの海外展開に乗り出している。その際にそれらを「デジタル公共インフラ」と呼ぶことで、より普遍性をもたせようとしている。

インドによるデジタル公共インフラの海外展開は、主に次の三つのスキームに整理出来る。
① Aadhaarのような本人確認基盤を構築するための、ソフトウェアを中心とするプラットフォーム「MOSIP」の提供
② India Stackの諸機能のシステム提供
③ India Stackの一つである携帯電話を用いた即時送金システムUPIの海外利用の促進、および海外の同様の即時送金システムとの相互接続

インド政府はこれらを通じて、①国際支援、②経済交流の促進、③自国民の海外での利便性向上を促し、ひいては自国の一層の経済発展と国際社会におけるプレゼンスの向上を目指している。

このうち国際支援を目的とする海外展開では、中国による一帯一路イニシアティブも含め、従来の国際支援とは大きく異なる手法が採られている。まず、無償提供を基本としている。提供するのが、複製コストが無料に近いソフトウェア・システムを中心とすることから可能なのであろう。また、これらのソフトウェアはオープンソースで提供され、提供プロセス自体も公開する、いわゆるオープンスタンダード方式が採用されているため、導入国はベンダーロックインを回避することが出来る。一方、システム構築では水平分業体制が採られている。インド側がコア技術、その他の部分についてはインドだけでなく世界中の企業が提供し、国際機関やNPOからの支援も得ている。

海外展開の取り組みは始まったばかりであり、インド政府が期待する効果、すなわち自国の一層の経済発展と国際社会におけるプレゼンスの向上を得られるか否かは現段階では未知数である。伴となるのは、展開先の国や関与する組織といかに良好な関係を築けるかである。インドの取り組みは自国だけでは完結しないだけに、関与者すべてにメリットが及ぶ必要があり、それを実現するには相当な努力と工夫がインド側に求められる。

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