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リサーチ・フォーカス No.2023-049

【金融政策正常化シリーズ③】
設備投資、金利上昇が一部産業で重石 ― 不動産市場や課題解決への悪影響に懸念 ―

2024年02月22日 西岡慎一後藤俊平


わが国では、金利上昇が設備投資を押し下げる効果が低下している。試算によれば、金利1%上昇で設備投資は▲1%台の減少にとどまる。この減少幅は1980~90年代の▲3%台から半減している。この背景には、①借り入れの減少と②無形資産の増加が挙げられる。多くの企業がバブル崩壊後、金利変動の影響が小さい内部資金を原資に設備投資を実行している。さらに、ソフトウェアなどの無形資産は更新投資が多く、金利変動の影響を受けにくいという性質を持つ。

もっとも、一部の業種では、借り入れを原資とした設備投資が大きいほか、無形資産への投資が少なく、金利変動が設備投資に強い影響を及ぼす。これには、①電気ガス、②不動産業、③運輸業、④宿泊・飲食業などが該当する。これら業種では、過去から一貫して金利1%上昇で設備投資が▲5%減少する関係がある。

仮に金利が大きく上昇した場合、設備投資を巡って次の2点に注意が必要であ る。第1に、不動産市場の落ち込みである。不動産業では、長年の低金利下で設 備投資が積極的に実行されており、都市部の不動産価格には過熱感がみられる。 金融機関では関連の貸出ウエイトが上昇しており、特に下位業態でこの傾向が強 い。金利上昇を受けて不動産価格が大きく下落する場合、金融仲介機能の低下で 経済が下押しされるリスクがある。

第2に、社会課題解決に向けた取り組みの抑制である。たとえば、電気業などでは多額の環境投資が課題であるが、年限が長い環境債などの発行は金利変動の影 響を受けやすい面がある。また、深刻な人手不足に直面する運輸業や宿泊業など では、金利上昇が省力化投資を抑制する可能性もある。金利上昇がこうした取り 組みを阻害することがないよう、政府は投資促進策を一層強化する必要がある。


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