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リサーチ・アイ No.2023-079

GX経済移行債の発行開始と今後の課題~広範な気候変動対策の推進に向けてさらなる資金確保が必要~

2024年01月29日 大嶋秀雄


わが国政府は、グリーントランスフォーメーション(GX)の実現に向けて今後10年で150兆円超のGX投資が必要であるとし、その呼び水として20兆円規模のGX支援を実施方針。本年2月、その財源となるGX経済移行債の発行が開始され、GX支援の政策枠組みが始動。

GX経済移行債を財源としたGX支援の対象は、「民間で投資判断が困難」等の原則に加えて、「産業競争力強化」と「排出削減」の両要件を満たす事業で、具体的に蓄電池や浮体式洋上風力発電等を例示。また、対象事業者の要件として、脱炭素に取り組む企業の連携枠組みであるGXリーグによる排出量取引制度(GX-ETS)への参画が求められる見通し。

もっとも、GX支援は長期的な産業競争力強化と脱炭素の両立に向けた施策中心で、目先の排出削減に向けた施策は限られる。しかし、GXリーグ参画企業でも30年度排出削減目標が政府目標に届いていないとされ、短期的な排出削減の後押しも重要。また、GX-ETS参画等の要件は脱炭素対応の遅れが目立つ中小企業にはハードル高。加えて、当面温暖化の進行が避けられないなか、風水害の深刻化も予想され、老朽化が進む社会インフラ強化等の適応策も喫緊の課題。

こうした様々な対策には膨大な資金が必要。IMFは、補助金中心の気候変動対策では政府債務が大幅に増加して財政不安や金利上昇のリスクが高まると指摘。気候変動対策の推進では、炭素税の併用等による財政面の持続性確保も不可欠。GX経済移行債は28年度導入の化石燃料賦課金等を償還財源とする予定ながら、広範な気候変動対策にはさらなる資金が必要。わが国政府は、国民に対策強化の必要性を十分説明したうえで、化石燃料賦課金の導入早期化や水準引き上げ等も検討し、短期的な排出削減を促すとともに、必要な資金を確保することが肝要。


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