① 放流のみに頼ることが招く水産資源の枯渇 昨年もサンマの不漁が続いたほか、全国でサケの遡上も芳しくないことが確認されている。水産資源が減少する状況に対し、わが国で一般的に行われているのが稚魚を放流する取組(種苗放流)だが、放流量を増加させても資源の回復につながらないばかりか、放流先の水域の生態系に悪影響を与えるとする研究成果(※2)が発表された。自然界は、減った生物種を増やして投入すれば元に戻る、という単純な仕組みではない。活動量の計測や取り組みやすさは劣るかもしれないが、現場の状況に照らし、資源回復まで漁をしない、生物が生息しやすい水辺環境を改善する、といったこれまでとは異なるアプローチの必要性が高まっている。
② 外来生物駆除の遅れによる問題の固定化 ヒアリ、ツマアカズスメバチ、セアカゴケグモなど、人への健康被害が懸念される外来生物の問題は近年話題となったが、条件付特定外来生物に指定されたアカミミガメとアメリカザリガニ(※3)、河川を移動して生息域を拡大する恐れのあるコクチバスなども注目を集めている。こうした外来種では、その初期駆除対応に失敗すると、後々の対応が一層困難になる。例えば千葉県ではキョンが7万頭を超える生息が確認される事態となっている。この事例では、ジビエとして活用することで駆除を促進しようとする動きも生まれているものの、このような対策は、外来種の活用・維持につながり、根絶にはならないとの懸念も示されている。駆除対象となる頭数が増えた後では、「可哀そう」といった感情的な反発も生みやすく、より対応を難しくさせることとなっている。
③ ペットに関わる事業者・飼い主の不適切な管理 野生生物の違法取引が世界的な問題となる中、国内では海外産のカブトムシ、クワガタムシの大量流通や特定の島にしかいないカエル、イモリの持ち出しが問題視されてきた。水際での持ち出し阻止のほか、主にインターネット上での取引ルートを監視・規制する対応が求められている。また、飼育するペットについても、飼いきれないペットを野外に放してしまうことで外来生物となってしまう問題、猫の外飼いが野生生物に危害を与えるといった問題を指摘する声も国内外で高まっている。