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リサーチ・フォーカス No.2023-042

最近の消費低迷の背景を探る ― 引退世帯は堅調も勤労者世帯が下振れ ―

2024年01月09日 小方尚子


わが国の個人消費は、2023 年以降、弱い動きが続いた。世帯タイプ別にみると、引退世帯の消費は堅調を維持する一方、勤労者世帯の消費が弱含んでいる。

この背景として、第 1 に、コロナ禍からの回復のタイミングの違いが挙げられる。引退世帯では、2023 年に入ってから本格的な消費回復が始まった一方、先行して回復していた勤労者世帯では、春先までにペントアップ需要が一巡した模様である。

第2に、生活必需品への支出割合の違いが挙げられる。引退世帯では、食料などの必需品の支出割合が高いため、価格が上昇しても購入数量を減らしにくい。一方、勤労者世帯では、選択的支出への割合が高く、物価高で消費が抑制されやすい傾向がある。

第3に、所得状況の違いが挙げられる。引退世帯では、年金給付が引き上げられたほか、金融資産を多く保有する世帯を中心に株高による財産所得の増加が可処分所得を押し上げた。一方、勤労者世帯では、賃上げ幅にバラツキがあるため、多くの低所得世帯で所得が増加しておらず、消費が低迷している。

先行きを展望すると、引退世帯では、コロナ禍からのリバウンド需要が一巡するとみられるものの、必需品の支出割合が高いことから、大きな落ち込みには至らない見込みである。コロナ禍で積み上がった過剰貯蓄を取り崩す動きも下支え要因となると考えられる。

勤労者世帯では、賃金上昇による所得環境の改善により、低所得層の消費が持ち直すほか、高所得世帯でも物価上昇が落ち着くにつれて選択的支出品目の買い控えが解消されていくと見込まれる。食品や日用品などで購買単価が物価上昇以上に高まる傾向が続いており、消費者が値上げに慣れる兆しもみられている。

もっとも、中東情勢の悪化などを背景に原油高再燃のリスクもくすぶり、消費回復に向けて、輸入コスト面からの物価上昇圧力が落ち着くかどうか注視する必要がある。

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