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JRIレビュー Vol.2,No.113

少子化対策で見落とされる非婚化の進展

2023年12月18日 藤波匠


コロナ禍の影響によって、わが国の婚姻件数は、2020年4月期以降、大幅な減少となった。婚姻数の減少は、おおむね2年後の出生数の減少をもたらすことが知られており、2022年の出生数は前年比▲5.0%の減少となった。2022年の婚姻数には、回復の動きがみられたものの、2023年に入り再び減少しつつあり、通年で前年比▲10%程度の大幅減少となる可能性がある。

婚姻数の減少は、若い世代の結婚に対する意欲の低下によりもたらされたと考えられる。とくにそうした傾向は女性に顕著で、その背景には、コロナ禍による社会・経済環境の変化があった。緊急事態宣言の発令とともに出会いの機会や人と人のつながりなどの人的ネットワークが失われただけでなく、企業が非正規雇用者数を大幅に削減し、それが多くの女性の経済・雇用環境を悪化させたことなどがある。

このように、女性の婚姻意欲の低下の一因として、わが国雇用慣行にみられる女性の経済的地位の低さ(ジェンダーギャップの存在)が指摘可能である。わが国では、業種や地域によって、女性の経済的地位が極端に低いことがあり、それが暗黙のうちに家事・育児の担い手を女性に固定化している。さらに、働く女性が増えたにもかかわらず、結婚や出産によって将来のキャリアを失う可能性が高いことも、女性の婚姻意欲の低下を助長している。若い世代の経済環境の改善とともに、男性優位の雇用慣行を改善し、男女がともに家事・育児に参加する社会的素地を作っていくことが、結婚、出産を後押しすることにつながろう。

極めて私的な価値判断に依拠する結婚を、第三者が後押しするには限界もある。近年では、若い世代を中心に出会いの機会を創出するマッチングアプリなど、インターネットを活用したサービスが急速に普及してきている。ただし、日本総合研究所が実施したアンケートの結果からは、一定の割合でネット環境そのものに対する不信感や不安感を拭いきれず、参加をためらう層の存在が認められる。結婚相談所やお見合いといった伝統的な出会いの機会を創出するツールが下火となりゆく状況下、このままでは、今後一層出会いの機会に恵まれない若者が増える可能性が高い。アプリ提供事業者には、システムの信頼感をより一層醸成することを通じ、広く門戸が開かれた出会いの場とすることが望まれる。

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