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B Corpをビジネススクールで学ぶ

2023年11月14日 橋爪麻紀子


 当社では、22年度後半からB Corpに関連した調査研究や情報発信に注力している。B Corpとは、米非営利法人B Labが2007年から運用を開始した環境や社会に配慮し、公益と利益を両立し得る「よい」企業のための認証制度を指す(注1)

 B Corpに関連した委託調査研究(注2)や独自調査の傍ら、並行して多様な情報発信をこれまで進めてきた。そのターゲットを、社外だけではなく社内に置いたことも新しい挑戦だった。通常、シンクタンクの発信は、政府、自治体、業界団体、企業等を対象とする。そのような中、社内を対象としてB Corp関連の活動を行うのは、私たち創発戦略センターが「ThinkからDoまで」を担うドゥタンクという理念を掲げていることと強く関係している。社外向けにB Corpの良さを訴えるなら、まずは自組織がB Corpになり得るかにチャレンジするところから始めよう。そう考えたからである。

 23年度前半から、社内の全部門の協力を得て、当社の実態のうち、高く評価される点、逆に低く評価される点を議論しながらB Corpの認証評価プロセスを進めている(執筆時点で継続実施中)。そこで得られた私たちの学びは、環境対策、従業員の福利厚生、DE&I、サプライチェーンなど多岐にわたって、これから実施すべき対策の余地がハッキリと浮き彫りになったことだ。これは全てのB Corp認証取得企業が多かれ少なかれ経験してきた道でもあるだろう。
 こうした学びのプロセスを自社内の人材育成に使えるのではないかと考え、海外の大学やビジネススクールで、学生がB Corpをどのように学んでいるのかの調査も進めてきた。B Labと連携するNPOで、B Corp認証を活用した実践的教育プログラムを展開しているB Academics(注3)との勉強会も実施した。

 そうした活動の一つの成果として、当社と早稲田大学ビジネススクール(WBS)が共同で「B Corpを活用したSX人材育成(仮)」と称する講座を24年2月に開設する運びとなった。共同講座の受講者は、WBSの社会人学生・卒業生に加えて、当社社員も想定している。
 前者を想定したのには、働きながら学ぶという目的意識の高い方々にB Corpを社会に拡散していただき、同時に各自の所属組織でB Corp取得を検討する機会につなげて欲しいという期待がある。後者を想定したのには、B Corp認証評価のプロセスを通じ、所属組織の社会や環境に関する取り組みを理解することで、当社の社員個人が新たな社会的価値を日常業務でどう生み出していくのかを考える契機としたいという意図がある。社内外立場の異なる属性のグループが混在することによる、闊達な議論が生まれるのではないかという期待もある。この取り組みの事業費の一部には経済産業省の「共同講座創造支援事業費補助金」を活用させて頂くことも決定し、少しずつ注目が高まっている(注4)

 サステナビリティ視点を持った人材育成があらゆる業種で求められている中、B Corpの認証制度を題材とし、B Corp認証を取得した企業の経験から学ぶ講座は国内では初めての事例になると思っている。国内で徐々に増えてきたB Corpの活動実践がより実りのある継続した取り組みになるよう、チーム一丸で臨みたい。

(注1) 大企業にも広がるB Corpムーブメント——戦略的な活用方法とは | GREEN×GLOBE Partners
(注2) ベネフィットコーポレーション等に関する調査
(注3) Home - B Academics
(注4) 令和4年度 共同講座創造支援事業費補助金


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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