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RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.23,No.91

ASEANのデジタル化を牽引する中国企業

2023年11月09日 岩崎薫里


ASEANでは、社会の広範な領域でデジタル化が進行している。これを牽引しているのは、地場のスタートアップやアメリカのIT企業に加えて中国のIT企業である。デジタルの場面に日本のIT企業はほとんど登場せず、このことがこの地域で日本企業、さらには日本全体の存在感が低下する一因になっていると考えられる。逆に、中国IT企業の顕著な活躍が中国の存在感の高まりを後押ししている。

中国IT企業のASEANでの強みは、資金力および技術力・ノウハウの高さである。地場スタートアップの買収や投資、さらには現地政府と連携した積極的な技術協力は、母国である中国国内市場で大きく成功し、潤沢な資金を投入可能であることから実現している。それに加えて、母国市場での激しい競争のなかで技術力やノウハウが磨かれ、価格面のみならず品質面での競争力も向上した。

中国IT企業がASEANに注力しているのは、この地域でのビジネスチャンスが大きいとの期待に加えて、母国市場が成熟し一段の成長余地が小さくなりつつあるなかで、海外に活路を見出しているためと推測される。米中対立や印中対立のあおりで新たに進出するのが難しい国が増えるなかで、ASEAN諸国はこうした動きから一定の距離を保とうとしており、その点もこの地域が着目される背景として無視出来ない。このような事情を踏まえると、中国IT企業のASEAN進出は今後一層進むことが見込まれる。

ASEANのデジタル化の波に日本企業が十分対応出来ていないのは、その担い手となるべき世界の時価総額上位に入るような著名IT企業を日本から輩出出来なかったためである。しかし、デジタル技術の普及とともに、非IT企業であってもデジタル技術を駆使出来るようになっている。日本の非IT企業がASEANにおいて、デジタル技術を活用しながら事業を行う余地は従来に比べて大きい。

日本の非IT企業にとって有望なのは、課題解決の事業化である。ASEANは急速に経済発展したものの、依然として多くの課題を抱え、そのなかには日本の経験やノウハウをデジタル技術と組み合わせることで解決可能なものもある。こうした事業の担い手として、ASEANに進出している日本企業の現地法人が考えられる。もっとも、このスキームを実現するには、現地法人の役割として新規事業の創出を新たに加えるとともに、そのための体制整備を進める必要がある。

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