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デジタル証券とRWAトークンの動向

2023年11月07日 先端技術ラボ 市原紘平


本レポートでは、デジタル証券とRWAトークンの動向を整理・解説する。

●要旨 ~デジタル証券(セキュリティトークン)の動向~
足許の動向
デジタル証券(セキュリティトークン, ST)は、国内で現在までに社債や受益証券発行信託などについて事例が積み上がっている状況。セキュリティトークン発行に使用するプラットフォーム(ソフトウェアサービス)については、これら事例のある有力な数社が出てきている。セキュリティトークンはブロックチェーン技術を用いているが、これらサービスを利用する上でそれを意識することはほぼない。

2023年度内に、地方債や大学債などのデジタル証券(セキュリティトークン)形式(券面不発行の非振替債)での発行に関する法令規定がない類型の証券について、発行を可能とする法令規定の改正措置が検討される。デジタル証券(セキュリティトークン)での起債にあたっては、その特性を活かした商品設計をすることが重要と考えられる。先行事例のある社債などのデジタル証券について、特性として原簿によって権利者情報(氏名・住所)を管理する点が挙げられる。地方債についても、原簿への氏名・住所の記載が対抗要件となる改正措置が仮に行われた場合、原簿によって権利者の住所を発行体が継続的に把握可能である点を活かし、権利者へ何らかの物品(特産品など)をリターンとして直接付与するような商品を組成することは、デジタル証券形式の特性を活かした商品設計の1つとして考えられるのではないか。

課題など
ほふり対比の発行コスト低減についてはあまり期待できないのではないか。金融機関の情報システムやオペレーションは現状ほふりに最適化されており、本格的に多数の引き受けを行っていくこととなると、これらに対する改修や変更のコストが発生する。また、デジタル証券の発行・管理システム(STプラットフォーム)はほぼ全て、クラウド基盤(AWS, Azureなど)上に構築されており、これに伴う種々のサイバーセキュリティリスクは存在する。加えて、仕様が一般に非公開なほふりに対し、STプラットフォームはオープンな技術仕様に基づいている点でもサイバーセキュリティリスクが存在(仕様がよく知られている分攻撃しやすい)。例えば、エクセルファイルを社債原簿としている事例などが知られている[1]。今後セキュリティトークンの2次流通市場となる見込みのODX(大阪デジタルエクスチェンジ)の注文管理などのシステムと各社STプラットフォームとが接続されていくものと考えられるが、独立して設計されたシステム同士からなる「システム・オブ・システムズ」(SoS)の構成となるため、SoSに関するリスク管理を行う必要がある。

●要旨 ~RWAトークンの動向~
RWAトークン(Real World Assetトークン)は、現実世界の経済活動の中で価値を持つ有体物に対する権利やその他の権利などを表したトークン。証券に該当するものはセキュリティトークン(ST)と呼ばれ、広義にはSTもRWAトークンといえるが、分けて扱う立場もある。RWAトークンと呼称する場合、何らかの有体物に対する権利や利用権を表すなど、ST以外のものを指すことが多い。トレーディングカードやスニーカーなどのコレクターズアイテムや、希少性の高い酒などの現実資産を受領できる権利をNFT化(個々に識別できるトークン化)したものを、債務の償還になぞらえて「現物償還型NFT」と呼ぶ場合もある(なお、法的には対象が物品であるため、償還請求権ではなく引渡請求権であると考えられる)。

RWAトークンの事例としては「現物償還型NFT」の他、宿泊施設の利用権のトークン化などの事例が出てきている。どのようなRWAトークンでも共通して、以下の2点がサービス提供者・利用者の双方にとって重要である。
(1)何に対するどのような権利を保証しているトークンなのか。
(2)トークンを譲渡した際、その権利が譲渡先に確実に移転され対抗要件も具備される契約、情報システムの設計となっているか。

RWAトークンは、商品の生産者やサービス提供者が将来の商品引渡請求権やサービス利用権を事前に販売することで事前にキャッシュを得ることができるため、資金調達の新たな手段として期待される。一方で、商品やサービスなどが過剰に投機対象となってしまうと、本来届けられるべき利用者に届かない、もしくは不必要に過度な費用を要してしまうことになる。このような望ましくない事態が発生しないような仕組みを設計することが望まれる。

[1] 株式会社野村資本市場研究所. “金融市場におけるブロックチェーン技術の活用に関する研究会 -報告書-”. 「金融市場におけるブロックチェーン技術の活用等に関する研究会」の終了および報告書. 2020/11/5. http://www.nicmr.com/nicmr/data/report.pdf

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