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サービス学の概要とSociety5.0へ向けた考察 ~サービスに関する学術研究の整理を踏まえた社会洞察~

2023年07月04日 先端技術ラボ 市原紘平


本レポートでは、サービスに関する学術研究を整理・概観し、Society5.0におけるサービスについて考察する。

サービスに関する学術研究に着目する背景

MaaS(1)やSaaS(2)など、有形、無形の財をサービスとして利用する形態のビジネスが拡大している。人々の価値観の面でも、物質的な豊かさに満たされた先進国等では、医療、教育、観光、エンタテイメントなど、心身の快適性や新鮮な経験、楽しさといった精神的な満足へと欲求が移ってきている。

このため、より良いサービスを効率的に社会に提供することは業種を問わず企業にとって重要となっている。また、行政機関にとっても、人間中心の豊かな社会(「Society5.0」としても標榜されている(3))や効率的な行政サービス提供の観点などからこれは重要である。さらに個人にとっても「ギグワーカー」(4)や「パッションエコノミー」(5)の隆盛、企業の従業員という立場を離れたプロボノ活動(6)など、サービス提供者としての立場を意識することが、従来の消費者(受容者)としての立場に併せて重要度を増している。

本稿ではサービスの新規開発・高度化を首尾よく進めるための知見を求め、サービスに関する学術研究を概観し、有効な手法としてデザイン思考を取り入れた「サービスデザイン」の重要性を提案する。 また、Society5.0におけるサービス・エコシステムに関する考察について述べる。


サービスデザイン分野の重要性

サービスに関する研究の中でもデザイン思考を取り入れたサービスデザインは、顧客の立場から望ましいサービスのプロセスを構成していくものであり、普段から顧客の立場を経験している一般の人にとってもなじみやすく、またサービスを企画、構成する側にとっての有用性も昨今指摘されている。

サービス提供者の立場からサービスデザインが重要であるのみならず、サービスに関する学術研究を発展させる上でも、学術界から積極的に海外を含めたサービスデザインの知見を発信していくことが重要ではないかと考える。


サービス化する社会への洞察 -ソフトウェアによる機能を重視して考えるサービスの設計-

「ソフトウェアを中心に必要なモノやヒトが統合され、目的を達成するサービスが実現する」というサービスの在り方(CPSaaS; CPSアズアサービス)が今後隆盛するのではないかと考える。

このため、サービス設計(や顧客体験の設計)において、デジタルのプロセスを前提に顧客の目的達成までの全体像を検討し、物理的な作用が必要な場面にそれを達成するための物財やヒトを組み込むといった考え方が有効となるのではないか。

言い換えると、現実世界で既に行われてきたプロセスの一部をソフトウェアによる処理に置き換えるといった発想から、ソフトウェアによる機能が物理・現実世界の活動や行為を制御するという発想への転換ができないか。

仮にそのような発想でのサービスの構想が可能になると、物理的な作用(モノの移動や、動かせない現物(不動産等)の点検等)が必要な場面では、ソフトウェアによる制御と相性の良い自律移動ロボットやドローンの活用が有効と考えられる。


「ソフトウェア主導」と「人間中心」の両立へ向け

ソフトウェアが主導するサービス構造は効率性や利便性を大きく向上させる一方、労働者のサービスへの関与の仕方も従来と変化する。

Society5.0が標榜する「人間中心」を達成するためにも労働者の権利を保障しながら価値共創を機能させる制度が望まれる。


(1)MaaS(Mobility as a Service) : 一人ひとりの移動ニーズに対応して、複数の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行い、移動の利便性を企図するサービス。
(2)SaaS(Software as a Service) : ソフトウェアの機能や利用時間について、必要な分だけサービスとして利用できるようにした利用形態。主にインターネットを介して利用する。
(3)Society5.0 : 『サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を⾼度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両⽴する、⼈間中⼼の社会(Society)。』(内閣府)
(4)ギグワーカー : 労働力の需要とサービス提供者の個人をマッチングさせるサービス(プラットフォーム)を介して仕事を受ける就業者。
(5)パッションエコノミー : 情熱を持って創造的な活動をする個人等が直接ファンと関係を構築することで展開する経済圏。
(6)プロボノ活動 : 各分野の専門家が、職業上持っている知識やスキルを無償提供して社会貢献するボランティア活動。

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