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リサーチ・アイ No.2023-044

東証カーボンクレジット市場の始動と今後の課題~Jクレジット創出支援や海外クレジット活用で取引可能なクレジットの増強を~

2023年09月25日 大嶋秀雄


東証は、本年10月11日にカーボンクレジット市場を開設。カーボンクレジットは、温室効果ガス排出削減量等を取引可能としたもので、購入者は自社排出を相殺(オフセット)、発行者は販売収益を獲得でき、低コストの排出削減の後押しや、オフセットを活用した実質脱炭素製品の拡大による家計の脱炭素意識醸成も期待。一方、様々な認証や分類があるため価値評価が難しく、相対取引中心で取引・価格決定も不透明であり、取引相手の確保も容易ではない。

こうしたなか、東証は、取引・価格決定の透明性向上や取引相手の安定確保に向けて、政府認証で信頼性の高いJクレジットの市場取引を行うカーボンクレジット市場を開設。22年9月から約4カ月かけて行った実証事業の結果を踏まえて、本年10月11日に正式稼働。

実証事業では、取引可能なJクレジットが少なく、再エネ、省エネ等の創出方法などで価格が異なるため種類毎に取引する必要もあり、取引不成立が頻発。市場取引による取引の透明性確保や手続き簡略化にはつながったものの、流動性が限られるなか、適正な価格形成や安定したJクレジット調達等は難しい状況。様子見の市場参加者が多かった可能性はあるものの、Jクレジット発行量の少なさを踏まえれば、正式稼働後も大きな改善は期待薄。

わが国カーボンクレジット市場の成長には取引可能なクレジットの増加が不可欠。Jクレジット創出事業への支援強化や政府・自治体主導の創出事業等で発行量増加を図り、品質評価・活用ルール整備等で安心して活用できる環境を整備することが重要。もっとも、発行量増加には時間を要するため、海外クレジットの活用も要検討。ただし、排出削減効果等に疑念のあるクレジットもあり、低品質クレジットを排除する品質評価基準や活用ルールの整備も必要。政府はこうした施策でカーボンクレジットの適切な活用を促し、円滑な排出削減につなげることが求められる。


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