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リサーチ・アイ No.2023-042

欧州による炭素国境調整措置(CBAM)の始動とわが国への示唆~製品単位の排出量管理が重要に~

2023年09月21日 大嶋秀雄


本年10月、EUの炭素国境調整措置(CBAM)が始動。CBAMは温室効果ガス(GHG)排出削減が不十分な輸入品に課金する措置で、炭素価格や脱炭素対応の負担が必要な域内生産品の競争力低下や、炭素価格負担回避のための域外生産移転(カーボンリーケージ)を防ぐことが目的。炭素価格が機能するために必要な仕組みであり、EUが世界に先駆けて導入したもの。

EU-CBAMは、鉄鋼・アルミ等を対象に、製品単位の排出量(カーボンフットプリント、CFP)に応じて、EU-ETS(排出量取引)排出権価格に基づいて課金。26年の課金開始に向けた移行期間として、本年10月以降、対象の輸入品に四半期毎のCFP等の報告を義務化。対象の排出量の範囲は、直接排出(Scope1)および電力利用等に伴う間接排出(Scope2)。

CBAMには、保護主義とみなされないための制度設計(WTO規則との整合性)や企業に過度な負担とならない運用等が求められ、EU-CBAMが先行事例となれば、各国で炭素価格導入が進むなか、CBAMの導入国・品目が広がる可能性。実際、英国や豪州等が導入検討。また、自動車等の完成品が対象となった場合、部品等に伴う間接排出(Scope3)に対しても課金される可能性あり。

今後、CBAM導入が広がれば、多くの企業において製品単位での排出量管理や排出削減が重要に。近年、大手企業を中心に企業・組織単位のGHG排出量の計測・開示が進められているものの、製品単位であるCFPの算定にはさらに詳細な計測が必要。政府は、CFPの算定等に関するルール整備や中小企業の排出量計測に対する補助金、計測・検証スキル習得支援、CFP計測・表示へのインセンティブ付与などを通じて、企業におけるCFP計測体制の構築を後押しすることが肝要。


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