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JRIレビュー Vol.7,No.110

学校教育時間外における学校空間活用の現状と課題

2023年08月31日 池本美香


2022年3月、文部科学省において学校施設の在り方について報告書が取りまとめられた。学校の役割として、子どものウェルビーイングすなわち身体的・精神的な健康の保障を重視する方針が掲げられたものの、報告書における検討対象は、学校教育時間内における校舎の在り方が中心となっており、時間と空間の両面において限定的である。そこで本稿では、学校教育時間外に屋内外の学校空間を有効に活用する方策について論じる。

近年、小学校においていじめ、暴力行為、不登校が急増しているほか、虐待の相談対応件数も増えている。体力の低下、肥満の増加なども見られる。この背景には、経済状況の悪化や共働きの増加などから、家庭で十分な世話が受けられない子どもが増えていること、および、自然環境、道路、空き地、家の庭などの子どもにとって自由度の高い遊び空間が減り、遊ぶ時間も減っていることがある。こうした課題に対し、学校空間は十分に活用されていない。例えば、子どもの貧困対策として子ども食堂が増えているが、学校が使われるケースは少ない。困難を抱える子どもを支える保健室は、放課後や学校休業日には利用できない。放課後や学校休業日に校庭や学校施設を開放する動きはあるものの、場所や時間、利用方法、遊びの種類などに制限が多い。7割以上の小学校では、敷地内に放課後児童クラブがあるが、校庭や校舎の利用は制限されている。

学校教育時間外における学校空間の有効活用に向け、次の三つについて早急に検討すべきである。
・学校空間の有効活用による、支援が必要な子どもへの対応強化。保健室や相談室に放課後や学校休業日にも子どもが立ち寄れるようにすること、学校の家庭科室などを使って早朝や放課後、学校休業日に子ども食堂やカフェ、子どものための料理教室を実施すること、図書室、音楽室、図工室、コンピューター室などを活用し、習い事に行く経済的余裕がない子どもの活動を支援することなどが考えられる。
・子どもの自由な遊びを保障する観点からの、屋内外の学校空間整備の在り方の見直し。海外では、遊びの権利の保障に向けて、校庭を緑と遊びの場に改造し、学校教育時間外にも開放する動きがある。動植物と触れ合える環境、おしゃべりやおやつのための居心地の良い場所のほか、木登り、火や水や土を使う遊び、音楽やダンス、廃材遊び、取っ組み合い遊びなど、自由で創造的な遊びが重視されている。
・これらの取り組みを各学校で効果的に進めていくための体制づくり。まず国が、学校教育時間外にも、屋内外の学校空間を子どものために有効に活用していくという方針を明確に打ち出す必要がある。そのうえで、①学校空間評価の義務化、②評価や整備・活用における子どもの参画、③学校が専門家の支援を受けられる体制整備が求められる。

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