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リサーチ・レポート No.2023-008

金融政策運営の改善に向けた中央銀行改革の方向性 ― 豪政府による豪中銀レビューとわが国への示唆 ―

2023年08月30日 河村小百合


豪州ではコロナ危機後、高インフレ抑制のための金融引き締めが後手に回ったことに批判が強まり、豪政府は政権交代を機に、2022年7月以降、豪中銀(RBA)のこれまでの政策運営等に関するパフォーマンスを検証・評価し、今後の金融政策運営や中央銀行としての組織運営の在り方も見直すべく、大掛かりなレビューを実施した。去る3月31日には財務大臣に最終報告書(『将来に適したRBA』 )が提出され、関連する検討ペーパーや調査結果等と合わせて4月20日に公表された。

一般的には政府から独立する形で位置づけられる中央銀行に対して、こうした外部の眼による客観的な評価が実施されるのは世界的にみても稀である。いかに政府から独立した立場とはいえ、最も重要な経済政策の一つである金融政策運営を専ら担う以上、“独断”や“独善”は許されず、外部の客観的な視点も入れて、徹底的に検証され、問題点があれば指摘を受け、改善を促される-これが成熟した市民社会における豪州流の中央銀行に対する統制の在り方である。

報告書における勧告は多岐にわたる。金融政策の枠組みとしては、“柔軟なインフレーション・ターゲティング”(目標は2~3%)が維持された一方で、金融政策の意思決定体制を強化すべく、理事会の開催間隔をのばし、外部メンバーに求められる資質をあらかじめ明らかにして政府側が人事運営を行うべきこと、外部メンバーに対するRBAの事務方の支援を強化して、理事会での多様な見方に基づく議論の充実を図るべきこと、等が提言されている。

また、RBAとしても非伝統的な手段を採用するようになった以上、5年に1度、RBAと財務省が共催する形で金融政策の枠組みの定期的な見直しを行うべきことも提言された。現在、RBA等において改革実施に向けての検討が進められている。

他方、わが国においては消費者物価上昇率が目標を大きく上回る状態が1年以上継続し、国民は重い負担を強いられている。日銀自身がこれまでの金融政策運営の結果抱えるリスクも大きくなっているにもかかわらず、植田総裁就任後も日銀の政策修正や正常化への取り組みは遅々としたものにとどまっている。

わが国においてもいずれ、日銀の金融政策運営の在り方や制度設計について、政府側の人事運営を含めて、抜本的に見直さざるを得なくなる日が到来することになろう。その際、今回の豪政府によるRBAのレビューは、わが国にとっても大いに参考になるものといえよう。


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