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ビューポイント No.2023-009

中国経済の「日本化」と長期停滞の懸念― 繰り返される構造改革先送り、「失われた30年」に陥る可能性 ―

2023年08月25日 野木森稔


中国では、ゼロコロナ政策解除後の景気回復に急ブレーキがかかり、先行きへの不透明感が強まっている。さらに、デフレ、就職氷河期、不動産不況といったバブル崩壊後の日本と非常によく似た経済現象が見られはじめ、「失われた 30 年」と同様の長期停滞に陥る懸念も高まっている。

もちろん、中国政府は過去の日本経済を研究している。実際に、不動産市場に関するコントロールを強化し、不動産バブルの崩壊を回避している。これによりバランスシート調整を起点とする消費や投資の急激な悪化には至っていない。さらに、中国政府は、これまでの経済成長が投資に偏ってきたという認識のもと、構造改革にも着手している。もっとも、その取り組みは十分ではなく、投資主導経済から消費主導経済への移行はうまくいっていない。構造改革は繰り返し先送りされており、それが経済成長力の低下を招く要因となっている。日本と同様に、改革が進まないことによる閉塞感が中国経済の活力を弱めていると考えられる。

中国経済が長期停滞を回避するための処方箋は、構造改革を先送りすることなく、投資偏重の経済構造を是正するための取り組みを着実に進めることである。そのためには、たとえ景気が悪化しようとも、安易な景気対策としての不動産規制の緩和やインフラ投資の拡大によって従来構造を温存しないことであろう。今のところ、中国政府は大規模な経済対策を控えるなど、慎重な対応に終始している。規制緩和などを通じた不動産業の支援策も小規模にとどまっており、不動産市場の調整を通じたバランスシートの健全化を優先している。

しかし、足元では不動産市場の調整圧力が急速に高まっており、企業の破綻が連鎖することで不動産危機に陥るリスクも無視できなくなっている。不動産業に代わって今後の経済成長をけん引するはずだったハイテク分野も中国政府の統制強化と米国政府による規制強化を背景に、成長が難しくなっている。不動産危機とハイテク分野の伸び悩みという2つの要因が深刻な景気悪化を招く場合、中国政府は政策の重点を短期的な景気支援に切り替え、不動産規制緩和やインフラ投資拡大を再び実施する可能性が高い。そうした対策は急激な景気悪化の回避に資するものの、一面では構造改革は先送りとなり、経済の長期停滞の可能性を高めることになろう。

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