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JRIレビュー Vol.6,No.109

アジア経済見通し

2023年07月27日 野木森稔熊谷章太郎


アジア景気は総じて回復している。先行きも、①サービス輸出の回復、②雇用環境の改善、③金利上昇圧力の緩和が支えとなり、2023年のアジア全体の成長率は前年比+5.3%と、コロナ禍前並みの経済成長を予想する。もっとも、中国景気は今後、旅行や外食といったサービス消費のリバウンド需要が一巡することで、回復の勢いは落ちるとみている。アジア景気全体のけん引役は中国からASEAN 5に移ると予想される。

アジア景気の下振れリスクとして、アメリカまたは中国の金融市場や不動産市場の変調が挙げられる。それをきっかけに両国経済いずれかが景気後退に陥る場合、アジア経済も大きく下振れる可能性がある。ハイテク製品の主要な需要地である米中の景気悪化は、巣ごもり消費の終息などで停滞するスマートフォンやパソコンの需要回復をさらに遅らせる。アジアの主力産業である半導体の需要停滞が景気の足を引っ張る可能性に注意を要する。

米中対立を起点とする地政学リスクもアジア経済の中長期的なリスク要因となる。米中対立がエスカレートすると、世界経済の分断が進み、アジア経済も深刻な打撃を受ける可能性がある。西側諸国などアメリカの友好国が積極化している国内回帰やフレンド・ショアリングの動きが過剰に進めばマイナス影響が大きくなる。供給網を混乱させる経済圏の分断や経済効率性を無視した産業移転などが新興国の発展を阻害する可能性に注意する必要がある。

アジア諸国のうち中国では、ゼロコロナ政策解除により経済が急回復し、2023年の成長率は前年比+5.6%と、政府目標(+5.0%前後)を上回る見通しである。しかし、年後半以降は、①財消費の軟調、②外需の低迷、③不動産市場の調整、が景気の足かせとなり、減速すると見込まれる。中国政府は景気下支え策を打ち出すとみられるが、大規模な財政出動には消極的とみられ、経済を大きく押し上げるほどの政策支援は期待できない。

インドの2023年度成長率は前年比+6.3%と、インフレ圧力の低下や個人所得税の非課税枠拡大などを支えに底堅い成長が予想される。ただし、異常気象によるエネルギーや食料の価格上昇が景気を下押しするリスクがある。2024年前半に下院総選挙が予定されているが、現時点では、与党が勝利し、モディ首相が3期目に入る可能性が濃厚である。ただし、今後の景気減速やヒンドゥー至上主義に対する反発などを背景に、現政権への支持率が急速に低下するリスクに注意が必要である。

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