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リサーチ・フォーカス No.2023-017

企業規模別にみた賃金動向の特徴 ― 大企業の構造的な賃金抑制局面は終焉 ―

2023年07月25日 小方尚子


短時間労働者を除く常用労働者の平均賃金は、すう勢的な人手不足を背景に2010年代前半から緩やかに上昇している。もっとも、大企業の平均賃金は、中小企業に比べ好業績が続いたにもかかわらずジリ貧傾向が続き、上昇に転じたのはコロナショックからの回復が始まった2021年である。この結果、大企業と中小企業の賃金格差は過去10年間で縮小した。

大企業の平均賃金がジリ貧で推移した背景には、年功賃金の調整や従業員の構成変化などが挙げられる。具体的には、①大企業の中高年男性の賃金が引き下げられたこと、②大企業が採用を抑制した就職氷河期(1990年代中盤~2000年代前半)に入社した世代が中高年に差し掛かり、賃金カーブのピーク近辺の労働者数が相対的に減ったこと、③賃金水準が低い女性や高齢者の活用が進んだことが挙げられる。

今後は、35~59歳の労働者が本格的に減少する。さらに、女性や高齢者の労働参加が進んだことから、それら労働力を増やす余地も乏しくなっている。このため、人手不足を背景とした賃金引き上げの動きが、若年層だけでなく中高年層にも広がっていく可能性が高い。

これまで大企業の平均賃金抑制に作用していた構造要因が縮小することで、大企業の平均賃金に上昇圧力がかかると考えらえる。その結果、大企業と中小企業の賃金格差が開いていくと見込まれる。

大企業の賃金上昇の定着は、経済全体の平均賃金の押し上げに寄与し、消費の活性化を通じて経済成長にプラスの循環をもたらす可能性がある。コスト上昇を企業努力で吸収する経営姿勢から、賃金を引き上げて人材を確保し、その人件費を販売価格に転嫁して利益の維持・改善を図る経営姿勢へのシフトも期待される。今後は、企業規模を問わず、生産性を引き上げることで、物価上昇を上回る賃金上昇を実現させることが課題となる。


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