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リサーチ・フォーカス No.2023-014

金融政策の正常化局面における中央銀行への財政支援の要否を巡る議論―独連邦会計検査院の指摘とわが国の課題 ―

2023年07月18日 河村小百合


コロナ危機後、日銀を除く主要中央銀行が、ハイ・ペースでの金融引き締めや正常化を進めるなかで、それら中央銀行の財務悪化が現実の問題となってきており、それをいかに乗り切るかが共通の課題となっている。

ドイツにおいては、ドイツ連邦銀行が 3 年前の 2020 年決算から、こうした利上げ局面入りを見越し、当期利益相当額を引当金の積み増しに充て、剰余金の国庫納付を停止する対応が採られてきた。連邦政府の側ではその分の歳入が失われることを通じて、すでに事実上の国民負担が生じている。

独連銀はさらに、金利上昇局面に入った 2022 年決算において、9.7 億ユーロ(1,458億円相当)の引当金を取り崩し、かろうじて「最終利益ゼロ・国庫納付金ゼロ」の形としたものの、これは同連銀が実質的な赤字局面に転落したことを意味する。

そうしたなか、連邦会計検査院が今般、独連銀の財務悪化を問題視し、今後、繰越欠損金の金額が大きくなれば、連邦政府の予算から損失補填をせざるを得なくなる可能性がある、と指摘したと報じられている。財務省に対しては、シナリオ分析等を通じて、今後独連銀の財務悪化が連邦政府の予算編成に及ぼすリスクを把握し、下院に報告するよう求めているが、財務省側はリスク評価が異なるとして反論している模様である。

他方、わが国においては日銀が、先行きの利上げ局面において他の主要中銀をはるかに上回る大きな財務運営上のリスクを抱えている。にもかかわらず、膨張した資産から得られる利息や分配金を基に巨額の国庫納付を継続しており、それが事実上、防衛力強化の財源に充当される雲行きである。

諸外国に対してこうした“周回遅れ”の状況を打開すべく、日銀は何よりも、経済・物価情勢に応じた機動的な金融政策運営と、対外的に十分な説明を尽くしたうえで政策正常化に早急に踏み切る必要がある。国の側も、岸田政権のリーダーシップのもと、財政運営に不測の影響が及ぶことのないよう、直ちに本腰を入れた財政再建に取り組むことが求められている。

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