リサーチ・レポート No.2023-004 【アジア経済見通し】アジアの安定成長を脅かす米中発リスク~世界経済分断の流れが成長を下押しする恐れ~ 2023年06月28日 野木森稔、熊谷章太郎アジア景気は総じて回復。先行きも、①サービス輸出の回復、②雇用環境の改善、③金利上昇圧力の一服、が支えとなり、2023年のアジア全体の成長率は前年比+5.3%と、コロナ禍前並みの経済成長を予想。リスクは米国または中国の金融市場や不動産市場の変調。それをきっかけに両国経済いずれかが景気後退に陥る場合、アジア経済も大きく下振れ。さらに、米中対立を起点とする地政学リスクも懸念材料。米中対立がエスカレートすると、世界経済の分断が進み、アジア経済も深刻な打撃を受ける恐れ。西側諸国など米国の友好国が積極化している国内回帰やフレンド・ショアリングの動きもマイナス影響を及ぼす可能性。経済関係の分断や排除の動き、経済効率性を無視した産業移転などが新興国の発展を阻害する可能性に注意。中国:ゼロコロナ政策解除により経済が急回復し、2023年成長率は前年比+5.6%と、政府目標(+5.0%前後)を上回る見通し。しかし、年後半以降は、①財消費の軟調、②外需の低迷、③不動産市場の調整、が景気の足かせに。政府は景気対策を積極化する見込み。インド:2023年度成長率は前年比+6.3%と、インフレ圧力の低下や個人所得税の非課税枠拡大などを支えに底堅い成長を予想。ただし、異常気象によるエネルギーや食料の価格上昇が景気を下押しするリスク。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)