リサーチ・フォーカス No.2022-062 賃上げの動きは広がるのか ― 労働生産性の全般的な向上と適切な価格転嫁が不可欠 ― 2023年03月02日 井上肇歴史的な物価高が続くなかで、賃上げの機運が高まっている。今春闘では大企業を中心に積極的な賃上げ表明が相次いでおり、企業規模や業種を問わず賃上げの動きが広がるかが焦点となっている。当面、中小企業の賃上げ率は大企業に追いつかないとみられる。コロナ禍以降、円安や資源高の影響などで収益力の格差が一段と開いていることに加え、労働分配率の引き上げ余地にも違いがあるためである。業種別では、製造業よりも非製造業の賃上げ率が低くなる可能性が高い。非製造業では、製造業よりも人件費の負担が大きい労働集約的な業種が多いことに加え、コロナ禍で打撃を受けた企業の業績が回復途上にあるためである。今春闘を契機に大企業の賃金が上昇すれば、大企業以上に人手不足が深刻な中小企業にも賃上げ圧力が徐々に波及すると考えられる。その際に、中小企業が十分な賃上げ原資を確保するには、①中小企業自身が大企業の労働生産性にキャッチアップするためのデジタル化などに取り組むこと、②参画企業が取引の適正化に努める「パートナーシップ構築宣言」の実効性を向上させることなどにより、人件費も含めたコスト増加分を適切に価格転嫁できるようにすることが求められる。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)