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ビューポイント No.2022-013

物価新局面における春闘再構築 ―価格・賃金低迷『ノルム』の転換を誘導する3 点セット―

2023年01月19日 山田久


コロナ禍・ウクライナ紛争を経て、欧米では高インフレが問題になっている。インフレ圧力の強まりはわが国にも押し寄せ、賃上げの緊要性はこれまでにないレベルで高まっている。2023 年春季労使交渉の最大の焦点は、既存春闘の機能不全と経済・物価を巡る世界的な構造・趨勢の変化を踏まえ、産業・雇用構造の変革を進めながら賃金を引き上げる新たな仕組み構築につなげる動きが出てくるかにある。

資源・エネルギー価格に構造的な上方圧力がかかり、効率性を犠牲にしてもリスク分散を考えてサプライチェーンを再構築することが必要な局面に入った。それに伴い資材・部材の調達コスト上昇は避けられず、コスト削減は限界に近づき、売上を伸ばさなければ企業の存続は難しくなる時代が到来している。そうしたなか、付加価値をつけて単価を引き上げるほか、利益を生む価格を付けられる新たな市場を創造する必要性が一層強まっている。価格引き上げを可能にするには、消費者がそれを受け入れるのに十分な賃上げがなされるかどうかが最終的な鍵となる。

賃金が上がらない最大の要因は、賃金と物価が相互依存的に上昇しない「値下げ・賃下げ」の悪循環にあり、「物価は上がらないもの」という『ノルム』(標準的相場観)が、バブル崩壊以降日本社会に定着したことに求められる。この『ノルム』を変え、「値下げ・賃下げ」の悪循環を打破する大きな鍵は「春闘の再建」にある。春闘を政労使・公労使の認識共有の場としてバージョンアップさせ、賃上げと取引価格適正化の大きな流れを作っていくことが不可欠である。

重要なのは、中央レベルの駆け声に終わらず、全国津々浦々に取り組みを広げる仕組みをどう作り上げるかである。具体的には、①中央公労使会議、②産業別・地域別公労使・産官学協議体、③賃金決定のための第三者委員会を3点セットで創設・稼働させることが必要である。

高インフレもデフレも回避して、物価安定(緩やかな物価上昇)を実現するのに適切なユニットレーバーコストの上昇率が存在する。物価安定化の成功例とされる第2次石油危機後の日本の状況からすれば、適切なユニットレーバーコストの上昇率は2%台前半と考えられ、春季賃上げ率では5%程度がそれに対応する目標値となる。


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