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労働者協同組合法を通じた「協同労働」の意義

2022年12月13日 小島明子


 2022年10月1日に労働者協同組合法が施行された。同法は、「協同労働」の理念を持つ団体のうち、同法の要件を満たす団体を「労働者協同組合」として法人格を与えると共に、その設立、管理等の必要事項を定める法律である。「協同労働」とは、働く人が自ら出資をし、事業の運営に関わりつつ、事業に従事するという働き方を指す。協同労働に関わる人達(組合員)は、組合を組織し、組合の「出資」「経営」「労働」のすべてを担うことになる。同法の施行を機に、多様な働き方の1つとして、「協同労働」が広まっていくことが期待されている。

 法律の施行以降、約2か月の間に8つの労働者協同組合(*1)が設立されていた。その多くは、東京圏以外のエリアで設立されており、地方を中心に労働者協同組合設立の動きが出始めている。第一号となったのは、三重県四日市市のCamping Specialist 労働者協同組合で、これまで特定非営利活動法人(NPO法人)として、放置された荒廃山林を整備し、キャンプ場を運営してきた。今後は、労働者協同組合という組織形態を通じて、地域の社会課題に資する仕事起こしを実現していくとしている。

 今回の法律施行を機に、労働者協同組合を通じた「協同労働」という働き方が広がっていく意義は主に3つ挙げられるだろう。
 1つ目は、地域課題の解決に繋がることである。「協同労働」は、地域社会で必要とされる仕事を担い、地域課題を解決することに適した形態である。「協同労働」が広がることは、地域課題の解決や、地域の活性化に繋がると考えられる。
 2つ目は、多様な人材が活躍できる機会の創出に繋がることである。「協同労働」では、働き方や仕事内容を組合員同士が話し合って決めていくことになる。多様な働き方が可能な環境をつくりやすい特長を持っている。多様な人材が活躍できる場が増えていけば、雇用機会の創出にも繋がると考えられる。
 3つ目は、主体的な働き方を実現できることである。「協同労働」では、組合の経営方針や働き方などを、組合員が話し合って決めていくことになる。単に「雇われている」という意識だけではなく、主体者として組合に関与する意識を醸成させる。主体的な働き方を選択することは、やりがいをもって仕事をすることができることにも繋がると考えられる。

 ここ数年、新型コロナウイルス感染症の拡大や、改正高年齢者雇用安定法の施行等を背景に、副業・兼業の解禁、ジョブ型雇用、リモートワーク、週休3日制度など、社会全体で多様な働き方が進みつつある。今までは、地域活動というと、その多くは退職したシニアや主婦などに支えられていたイメージが強い。しかし、今後は、企業勤めを続けながらも、副業・兼業の一環として、労働者協同組合を設立、あるいはそこに参画する形で、「協同労働」という働き方をしながら、地域課題に資する仕事に携わるという働き方も、企業で働く人たちの選択肢の1つになるのではないだろうか。

(*1) 令和4年11月24日付で国税庁のホームページにて筆者が確認した情報を記載している。三重県(2団体)、大阪府(1団体)、兵庫県(1団体)、神奈川県(1団体)、東京都(2団体)、福岡県(1団体)の計8団体。
 
参考文献「協同労働入門」(経営書院) 株式会社日本総合研究所 小島明子・弁護士 福田隆行(共著)


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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