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非効率な医療の特定とその改善に向けた提言

2022年10月18日 「持続可能で質の高い医療提供体制構築に向けた研究チーム」、川崎真規、野田恵一郎、青山温子富田奈央子、川内丸亮介、辻恵子、長崎俊憲、上田健史


概要
 日本の医療費は高齢化の進行と生産年齢人口の減少、医療の高度化を背景に、今後も増加する見込である。 そのため社会保障給付費、特に医療給付費の適正管理に資する医療制度全体の改革を検討する必然性は高く、議論が進められている。一方で、医療における非効率性を是正することで、より効果的・効率的な医療提供体制を構築することが求められる。
 本提言では、医療について指摘される非効率性を整理し、それらを改善することで期待される医療費削減可能性を定量化することを目指した。また、医療の非効率性の改善のためには、医療提供体制や医療技術におけるイノベーションを促すことが極めて重要であることから、医療への投資による国民への影響の整理を行った。
 本提言では医療における需要と供給のバランスから、需要に対して供給が過剰である状況を「ムダ」、需要に対して供給が過少である状況を「ムリ」、ムダとムリが混在・偏在化している状況を「ムラ」と定義した。これらの視点から可能な限り定量化が可能な課題点に対し、政府統計資料・会議資料等の各種公開情報や有識者による意見を参考に、それぞれの事象・論点について、医療費・医療資源の非効率性の観点から課題があると考えられる範囲を示すことを目指した。
 検討結果として、数兆円にも上る医療費の削減可能性を特定した。特に「プライマリ・ケアチーム体制整備」「価値に基づく医療の実装」は、ムリ、ムダ、ムラの解消に寄与すること、ムダの解消により数兆円規模の医療費削減が可能であることが明らかになった。具体的には、調剤薬局に関連した「重複投薬等の是正」「後発医薬品の普及に伴うインセンティブ廃止」といった非効率性の是正では数千億円程度の規模で削減可能である。また、入院にまつわる「過剰病床」や「長期入院」の項目で削減可能な推計額が大きく、優先的に着手すべき事項であると考えられる。
 非効率性を是正し医療費を削減することは少子高齢社会において患者負担を増大させないという観点から極めて重要な課題である。また、医療現場におけるムリ、ムラは、医療の質・アクセスを低下させ、国民全体の健康に好ましくない影響を及ぼし得る。同時に、最長寿社会となった日本において、在住する誰もが最先端の医療を享受し続けられるよう、イノベーションは最重要施策と位置づけられるべきである。持続可能で質の高い医療提供体制を実現するためには、聖域なき非効率性の改革とイノベーションの推進を両輪で大胆に進めることが不可欠である。

※詳細につきましては、下記の提言本文をご参照ください。
【非効率な医療の特定とその改善に向けた提言】
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