コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経済・政策レポート

ビューポイント No.2022-009

脱炭素化・エネルギー転換の雇用へのインパクト
石油危機の経験に基づく「公正な移行」の条件

2022年09月28日 山田久


「脱炭素化」がグローバル規模での最優先課題と認識され、エネルギー価格も高騰しているなか、わが国でもエネルギー安全保障強化・脱炭素化に向けた動きに火が付いている。脱炭素化・エネルギー転換にあたっては関連産業において新旧勢力の交代が不可避であり、旧勢力から吐き出される人々の新たな職の受け皿の創造や、新勢力が求める人材の十分な供給が、エネルギー転換を円滑に進められるどうかを大きく作用することになる。こうした脱炭素化に向けての産業・社会の変革のプロセスで生じる労働移動を円滑に進める必要性は、「公正な移行(Just Transition)」の問題として国際的に認識されている。

これまで公表された内外の脱炭素化の雇用への影響分析によれば、マクロベースではさほど大きくなく、ネットで大幅な雇用減になる可能性は低いとの見方が有力である。一方、ミクロベース、あるいは、個別の産業ベースのマイナス影響は無視できず、いかに労働移動を円滑に行うかが課題になる。これに関し、エネルギー・システムの転換を求められているという点で、1970年代の2度の石油危機の経験が参考になろう。

過去2回の石油危機の経験からは、①エネルギー多消費産業での研究開発投資を積極化し、新たなエネルギー・システムを前提にした技術・事業構造を構築すること、②エネルギー転換がもたらす社会構造の変化が生み出す産業構造全体の転換を見据え、全ての産業・企業が事業構造を見直すこと、③雇用施策としては雇用維持策と労働移動促進策の適切なミックスが重要であること、④エネルギー転換が求める経済社会構造の転換に対応するため、就業形態および家族形態も変化したこと、の4点が教訓・含意として引き出せる。

カーボンニュートラルに向けた「公正な移行」の実現のため、円滑な労働移動を進めるために今後わが国で求められる政策課題は、①失業なき労働移動促進策の強力な推進、②リスキング・アップスキリング政策の展開、③就業形態の多様化に対応した生活保障の仕組みの再構築、の3点にまとめられる。海外事例として、①についてはスウェーデンの「ジョブ・セキュリティー・カウンシル」、②についてはシンガポールの「スキルズフューチャー・プログラム」が参考になる。③に関しては、フリーランスという働き方を労働市場の中に積極的に位置づけ、新たな雇用の受け皿として育てるとともに、「雇用の空洞化」をもたらさないように、賃金・社会保障面でのイコールフッティングを進めることが必要である。

(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)
経済・政策レポート
経済・政策レポート一覧

テーマ別

経済分析・政策提言

景気・相場展望

論文

スペシャルコラム

YouTube

調査部X(旧Twitter)

経済・政策情報
メールマガジン

レポートに関する
お問い合わせ