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RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.22,No.86

中国の貿易依存度低下は何を意味するのか
市場規模と産業集積が高める優位性とその帰結

2022年08月04日 三浦有史


中国は「貿易大崩壊」および「スロー・トレード」に大きな影響を与えた。中国の貿易依存度の急速な上昇は、WTO加盟を機に「世界の工場」として台頭し、“メイド・イン・チャイナ” が普及することによって、そして、依存度の低下は、“メイド・イン・チャイナ” のシェアが天井を打ったことと、内製化が進展したことによって起こされた。

中国における内製化の進展は、輸出に占める国内で生産された付加価値の割合(国内付加価値率)の上昇でも確認出来る。電機・電子産業が繊維産業に代わる輸出産業の主役になったことがその上昇を促した。

中国の貿易依存度の低下は、内製化という金融危機以外の不可逆的な要因によって引き起こされた。内製化は、経済規模と成長性に対する期待、そして、産業集積の厚みという中国特有の優位性によって促され、金融危機によって加速した。

中国の経済成長率は鈍化するものの、貿易依存度は今後も緩やかに低下すると見込まれることから、「スロー・トレード」はなかなか解消されない。中国が「世界の市場」としての存在感を高めるのに比例して、企業は内製化を加速させるはずである。

グローバル・バリュー・チェーン(GVC)に依存する企業は、以前にも増して中国を震源とするサプライチェーン寸断のリスクに翻弄される。懸念される当面のリスクは、オミクロン株ないし新たな変異株が広東省や江蘇省など、工業製品の生産・輸出拠点のある地域に広がり、ロックダウンが頻発する事態に発展することである。

中国の貿易依存度の低下は、内製化によって中国の輸出産業が高い競争力を維持していることを意味し、中国の後に続く開発途上国(後々発工業国)の経済発展、つまり、アジアの「雁行的発展」(Flying Geese Model)を停滞させる。

GVCの観点からは、中国が世界経済のブロック化に向けて積極的に動くとは考えにくい。中国は最終財だけでなく、中間財の輸出国として台頭し、GVCにおいて欠かせない存在となった。これは、技術力を高めただけでなく、先進国市場への依存を深めたことを意味する。また、中国は世界最大の中間財輸入国としての顔も持つ。世界の製造業は中国なしでは成り立たないが、中国の製造業も世界なしでは立ちいかない。

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