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RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.22,No.86

米金融政策正常化下の資本流入減少に対するアジアの耐性
新型コロナ、ウクライナ危機が脆弱性を高める可能性

2022年08月04日 野木森稔


2008年の世界金融危機以降、新興国にとって先進国からの資本流入は経済成長の支えとなった。その背景に、世界の金融市場に潤沢な流動性をもたらしたアメリカの大規模金融緩和があったことは間違いない。しかし、同政策は転換の局面を迎えている。2022年に入り、米FRBは利上げと量的引き締めを開始し、金融政策の正常化を加速させている。今後、新興国の資本流入の減少は避けられない状況である。

主要新興国の資本フローへの影響を試算したところ、米金融緩和は2020 ~ 21年の主要新興国への資本フローをGDP比で年平均1.3%ポイント押し上げたが、2022 ~23年の押し上げ効果は同+0.8%ポイントと、▲0.5ポイント低下する。これは前回の正常化局面である2015年から2019年の5年間かけての資本フローの押し下げ幅に匹敵するもので、短期間で大きな資本フロー減少圧力がかかることを示唆している。

もっとも、新興国のなかでも経済・金融構造によって資本流入減少に対する耐性は異なり、今後も国ごとに通貨の下落幅など影響に差が出ると考えられる。アジアでは、インド、インドネシア、フィリピンが恒常的な経常赤字を抱え、対外借入依存体質といった構造的な脆弱性を抱える。しかし、ドル建て・短期債務への依存は低く、現時点では、2018年にアルゼンチンとトルコで生じたような危機的な状況に陥る可能性は低いと評価出来る。

足元では、新型コロナとウクライナ危機により経済環境が急激に変化していることに注意する必要がある。特にアジアでは、経常収支悪化、インフレ加速、政府債務累増という3重苦が大きな問題となりつつある。今後、これらの問題がさらに悪化すれば、資本流入の減少に対する耐性が弱まる、あるいは脆弱性を高める要因になりかねず、アジアの金融・為替市場の不安定化リスクが高まる恐れがある。

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