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リサーチ・フォーカス No.2022-022

少子化対策;欧州からの示唆
鍵は、よりよい未来の提示と財源の確保

2022年07月25日 藤波匠


少子化対策先進国とされた北欧などで、近年、出生率の低下が進んでいる。一方、欧州の中で低出生率にあったドイツなど一部の国では、出生率が上昇に転じている。結果的にOECD 諸国の出生率に収束傾向がみられる。

出生率が収束傾向を示す要因として、少子化対策先進国で政策効果が限界的に逓減していると考えられることや、ドイツなどの少子化対策後進国の一部で対策が強化されていること、さらに人口移動が活発となっていることなどが挙げられる。

ドイツでは、2012~2016 年に出生率・出生数が顕著に上昇した。これは、2000 年代後半から、保育サービスの充実のみならず、家族政策の見直し等、積極的な少子化対策に乗り出したことが功を奏した面がある。こうした政策面以外にも、様々な環境要因が出生率・出生数を押し上げた。良好な経済・雇用環境によって若い世代の暮らしぶりが安定し、EU 内外から移民が増え、さらには、1960 年代のベビーブーマーの子ども世代が出産期を迎えたことにより年齢構成が若返ったことなどである。

欧州の状況から窺えるわが国少子化対策へのインプリケーションは、①少子化対策は総合政策との認識、②持続性ある政策、③若い世代の経済・雇用の改善、④家族向けの社会支出の増額と財源の議論、などが重要ということである。若い世代の暮らしをあらゆる側面からサポートし、絶えず「よりよい未来を提示」することが重要であり、まずは賃上げや雇用の正規化など、暮らしの基盤づくりが不可欠と言える。ただし、これには時間を要することから、当面は社会保障でカバーせざるを得ない。家族向け社会支出をわが国より合計特殊出生率が高いOECD 諸国並みとするためには3.6 兆円の財源の積み増しが必要で、その財源に関する議論は喫緊の課題である。

わが国では、毎年安定して120 万人の出生数があった90 年代生まれの世代が出産期に当たる今後10 年間が、少子化にブレーキをかけるラストチャンス。2000 年以降に生まれた世代が出産期の中核となれば、出生数を維持することは極めて困難。2030年頃までの期間に、総力戦で少子化対策に取り組む必要がある。

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