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ビューポイント No.2022-008

資産所得倍増プラン実現に向けたマクロ的な課題
退職給付制度の見直しが不可欠

2022年08月16日 牧田健


岸田首相は、「貯蓄から投資へ」を進めるため「資産所得倍増プラン」を打ち出した。しかし、同スローガンは2001 年以来掲げられているが、あまり進んでいない。

わが国家計金融資産は膨大だが、超低金利の預貯金に偏重し、株式投資への比率が低いことから、財産所得はほとんど増えていない。この背景の1つとして、わが国家計の金融資産がリスク資産に対し保守的になっていく高齢者に偏在し、リスク資産投資に積極的な若年層には投資資金が不足していることが指摘できる。

この根本的な要因は、わが国独特の年功的な賃金制度および退職給付制度にあると考えられる。退職給付制度は、勤続期間の長期化を促す観点から多くの企業が導入している。しかし、この制度が高齢者の金融資産の預貯金滞留を招いているほか、労働市場の流動化を阻む要因となっている。制度見直しは功罪相半ばするが、「退職一時金のみ」の企業は、一部を退職年金に移行し、それ以外は給与増額という形にすれば、若年層でリスク資産投資が増大する可能性が高い。

一方で、株価の安定的かつ長期な上昇には、名目GDP成長率の上昇も必要であり、わが国企業の「稼ぐ力」の回復といった成長戦略が欠かせない。また、可処分所得が増えても消費支出の拡大につながっていない現状に鑑みれば、高齢化を受けた社会保障制度の持続可能性に対する不安や購買力低下を受けた実質的な生活水準低下への懸念の払拭も不可欠である。

「貯蓄から投資へ」の実現には、それを阻んできた要因を真摯に見つめ、金融に絡む制度や税制の見直しにとどまらず、陳腐化し非効率になった経済構造を抜本的に転換していかなければならない。

(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)
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