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ビューポイント No.2022-007

参院選挙後の優先政策課題 ~国際情勢激変で求められる経済基盤強化策の3つの柱~

2022年07月11日 山田久


7月10日に投開票された参院選挙は与党が勝利を収め、岸田政権は向こう3年間、基本的には国政選挙のない、腰を据えて政策に取り組める貴重な時間を得ることになった。ロシア・ウクライナ戦争の勃発後、わが国を取り巻く地政学的情勢はとりわけ緊迫度を増しており、国防の在り方の見直しが重要課題に浮上している。それは国民の生命にかかわる問題という意味では経済以前のレベルの重大問題といえるが、経済の問題を後回しにしてよいというものではない。むしろ、経済力が国防力の前提であり、外交パワーの源であることを踏まえ、今こそ経済基盤を固めることの重要性が高まっている。

世界経済は、米国をリード役とする全面的な「ハイパー・グローバリゼーション」の時代から、政治と経済を天秤に掛けながら、国と国との関係が複雑に再編される「選択的グローバル化」の時代にシフトした。さらに、あらゆる経済社会活動のベースとなるエネルギー・システムが脱炭素に向けて抜本転換を余儀なくされており、当面エネルギー不足が予想されるなか、経済との両立には炭素生産性の引き上げが強く要請される。こうした「選択的グローバル化」「エネルギー不足」の時代には、「持続性(サステナビリティ)」が重要なコンセプトであり、環境や社会に良い「付加価値(ヴァリュー)」を提供することが企業競争力の源泉となり、そうした事業展開を強力に後押しすることが国の役割になる。

国際情勢の変化によって戦略性が強く求められるようになるものの、他国との交流・友好を積極的に進めることの重要性は変わらない。未来に向けた投資を積極的に進め、自らの競争優位性に磨きをかけることの必要性も不変である。だが、そうした観点からわが国の現状を直視すれば、その後れには危機感を持たざるを得ない。足元の円安進行の底流には輸出競争力の低下があり、「内なるグローバル化」の遅れが日本企業の世界ベースの売上の伸び悩みにつながっている。「デジタル投資」「グリーン投資」「人材投資」といった未来への投資についても、諸外国対比大幅に遅れてしまった。

岸田政権が今後優先して取り組むべきは、①戦略的なグローバル化の推進(「内なる国際化」を進めるための、事業や留学のための国境を跨ぐ人の往来の回復・活発化)、②「課題解決先進国」を目指す投資の強化(社会課題解決の促進のためのパイロット・プロジェクトの立ち上げと横展開)、③人材投資・賃上げ促進への注力(「普通の労働者」の質の高さを維持するための、女性の活躍推進及びミドル・シニア層の再活性化)、の3つの柱からなる経済基盤強化総合政策の実行である。


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