リサーチ・フォーカス No.2022-018 物価上昇の打撃を受ける引退世帯の消費 ―低所得世帯ではコロナ貯蓄の恩恵も限定的― 2022年07月04日 小方尚子新型コロナ流行により、退職した高齢者世帯(引退世帯)の消費性向が大幅に低下したため、コロナ禍で蓄積された貯蓄額(コロナ貯蓄)は、引退世帯の平均で63万円と勤労者世帯の49万円を上回っている。引退世帯の消費性向が低下した背景として、感染に対する警戒感からサービス消費が自粛されたほか、新たな生活様式に対応した耐久財消費が少なかったことが挙げられる。一方、引退世帯が直面する物価上昇の負担は大きい。物価上昇による2022年度の負担増額は引退世帯の平均で7.2万円にのぼり、所得との対比でみた負担感は勤労者世帯よりも大きい。引退世帯では、コロナ貯蓄が積み上がっているとはいえ、物価上昇負担増を相殺する力は限られる。さらに、足元の物価上昇は、実質的な資産価値の目減りや年金給付額の減少を招いており、財産や収入の面でも引退世帯は大きなマイナス影響を受けている。このように物価上昇のマイナス影響は引退世帯で大きいため、ウイズコロナ下での消費回復ペースは緩やかにとどまる見込みである。消費全体に占める引退世帯のシェアも頭打ちになると考えられ、消費市場における引退世帯のプレゼンスが弱まる可能性がある。物価上昇で困窮する世帯も引退世帯に多いとみられ、それを的確に見極め支援の手を差し伸べる必要がある。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)