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リサーチ・アイ No.2022-016

英中銀の気候変動ストレステストでみえた課題

2022年06月02日 大嶋秀雄


本年5月、英中銀は、気候変動ストレステストの結果を公表(注)。NGFS(気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク)のシナリオを基に、2つの脱炭素シナリオ(①早期対応、②対応遅延)と温暖化シナリオ(③対応無し)を設定。金融機関の想定損失額は、シナリオ①で約2,000億ポンド、シナリオ②③で各々約3,000億ポンドとなり、不確実性は高いものの、英国の金融システムを揺るがすほどの影響はないとの評価。

一方、気候変動特有の問題も浮き彫りに。とりわけ注目すべきは、個社分析の精度。今回、英中銀は、金融機関に主要取引先の個社分析を要請したものの、移行リスクでは、企業の移行計画の評価の違い、サプライチェーン全体における温暖化ガス排出量の把握の難しさ、複数の事業を展開する企業の影響評価の複雑さなどから、同一企業に対する各金融機関の想定損失率に大幅な乖離が発生。物理的リスクでも、企業の所在地情報の不足がボトルネックとなり、正確な評価が困難に。個社分析の精度の低さは、脱炭素や温暖化のリスク(気候関連リスク)の適正な把握を妨げる恐れ。

個社分析の精緻化には、①精緻かつ比較可能な企業の情報開示基準の導入、②企業の主要拠点の所在地やサプライチェーンに関する情報等の集約によって、データ制約を解消するとともに、③官民連携による分析手法の開発・ノウハウ蓄積、④分析結果の国際的な共有を通じた、分析手法の早急な確立が必要。これらの取り組みは、金融機関の投融資判断だけでなく、企業の自社・取引先への影響分析や、政府の脱炭素政策の産業影響等の把握にも寄与。わが国でも、日銀・金融庁が主要な金融機関を対象としたシナリオ分析を行っているが、個社分析の精緻化に向けた取り組みの加速に期待。


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