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リサーチ・フォーカス No.2022-008

出生数急減の背景を探るー経済環境と妊孕力の観点から

2022年05月20日 藤波匠


本稿では、「経済環境」と「妊孕力」の観点から、少子化問題を考える。

2015 年以降進む出生数の急減の一因に、若い世代の出生意欲の低下があるが、その背景には、若い世代の経済環境の悪化がある。理想子ども数まで子どもをつくらない理由として、8 割の夫婦が「子育てや教育に金がかかりすぎるから」としている。

正規職員の立場にある男性(未婚者)でも、近年希望子ども数が減ってきており、ことの深刻さを感じさせる。大卒の男性正規職員の実質年収をみると、1960 年代に生まれた世代に比べて、1970 年代に生まれた団塊ジュニア世代が属する40 歳代後半の平均年収は150 万円程度少なく、それ以降の世代でもほとんど回復がみられない。こうした環境下では、子育てや教育にかかる費用を負担に感じ、子どもの数を抑えがちになることは致し方ない面がある。

女性では、未婚者の4 人に1 人が、自ら子どもを産む人生をイメージできないと回答している。とりわけ非正規雇用の女性にとっては、結婚や出産のハードルは高い状況にある。男女とも、若い世代に、結婚や子どもを持つことに対する一種の「あきらめ」が広がっている可能性がある。

加齢による妊孕力の低下(男女とも)が少子化の一因であるとの見方があるが、2015年頃から女性の平均初婚年齢や第1 子出産年齢は横ばいで推移しており、足元の影響は限定的とみられる。これは、「女性の妊娠適齢期」を意識した動きと考えられる。

しかし、2015 年以前は、両指標は女性の4 年制大学進学率と高い相関を示していた。依然として女性の進学率の上昇は続いており、今後晩婚・晩産傾向が再び進展することで、さらなる少子化をもたらすことも否定しえない。

結婚、出産、育児を含む家庭生活と、仕事や勉学などの社会生活を若い時期に両立することが当たり前であるという発想を、国民の意識に根付かせるとともに、実際にそうしたライフスタイルを支える制度設計や経済支援が必要となる。若い世代が、公私ともに明るい将来展望を持つことができる社会を作ることこそが、少子化対策であるとの認識に基づいた、新しい政策体系の構築が必要といえよう。

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