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アジア・マンスリー 2022年4月号

中国の住宅価格をどうみるか

2022年03月28日 三浦有史


中国の住宅バブル崩壊を指摘する声は、現在少数派であり、目先は政府の価格下支えも効いている。しかし、遠からず人口減少を主因に、中国の住宅価格は中小都市を中心に調整圧力が急速に高まろう。

■2014年以来の「降価潮」
中国の住宅市場は一見すると好調である。国家統計局によれば、2021年の住宅開発投資は前年比+6.4%の11.1兆元、販売額は同+5.3%の16.3兆元、1平方メートル当たりの住宅価格は同+12.9%の1万139元であった 。しかし、前年比プラスの伸びを維持したのは、新型コロナウイルスの感染拡大により2020年前半の経済活動が停滞した反動で、2021年前半の伸び率が高くなったことが大きく、実態は弱含みである。

前月を100とした70都市の住宅価格騰落率の中位数を採ることで、月ベースの住宅価格の変動をみると、2021年9月以降の価格の低下幅は2014年に比べるとまだ小さい。しかし、新築と中古ともに価格が上昇する期間が2015年6月から75カ月も続いたため、調整局面に入るリスクは高いといえる。今回の価格低下は、2014年に現れた住宅価格が断続的に低下する「降価潮」の再来とされる。

中国の住宅価格は、年ベースの全国平均値でみれば、統計がとれる1991年から上昇が続いており、前年比マイナスとなったのは1999年(▲0.5%)と2008年(▲1.7%)しかない。今回の住宅価格の低下は、不動産開発企業の債務削減を通じた経営健全化が急務となっていることや、わが国の固定資産税に相当する不動産税が2026年から全国導入されることから、2008年を超える下げ幅になる可能性が高い。不動産シンクタンクの易居不動産研究院は、2022年の住宅価格が過去に例をみない低下を記録すると予測した。

わが国では、中国の住宅市況について、価格上昇が見込めない住宅を買う人はいない、あるいは、在庫が積み上がっていることを理由に、バブル崩壊の到来を予期する見方が出されている。購入者が住宅価格の低下を見込み、購入を見送る動きを強める一方、不動産開発企業も値下げによって当面の資金を確保する動きを強めていることから、バブル崩壊説の説得力はかつてなく高まっている。

■バブル崩壊を予測する見方は少数派
しかし、欧米諸国では中国における住宅バブル崩壊を指摘する見方は少ない。格付け大手のスタンダード・アンド・プアーズは、2022年に不動産開発企業の債務不履行が相次ぎ、3分の1の企業が資金繰りの問題に直面することから、2022年の住宅販売額を前年比▲10%、2023年も同▲5~▲10%と予測するものの、この間の住宅価格の低下幅は▲3.0%程度とみる。フィッチ・レーティングスも、住宅価格は2022~23年にそれぞれ年▲3~▲5%程度低下するものの、住宅需要は底割れしないとして、住宅価格の暴落に否定的である。

実際、中国人民銀行の都市家計調査によれば、次の四半期の住宅価格「低下」を予想する人の割合は2021年10~12月期においても15.2%と低く、依然として「不変」の56.7%、「上昇」の16.8%を下回る。住宅価格の「低下」を予想する人が増えない背景には、中央および地方政府が打ち出す住宅価格下支え策がある。具体的には、①住宅価格の値下げ制限、②不動産開発プロジェクトのM&Aを推進するための銀行融資の拡大、③住宅購入補助金の拡大、④住宅ローン金利の引き下げ、⑤不動産開発企業の預託口座からの資金引き出し規制の緩和、⑥住宅公積金を使った融資の拡大、など多岐にわたり、政府が住宅価格の低下を放置するわけがないという人々の期待を支えている。

■内陸の中小都市で住宅需要が減退
中国では、2022年2月末に住宅市場が年前半に早くも価格が上昇に向かう「回暖潮」に入るとする見方が現れるなど、住宅価格下支え策はかなりの効果を発揮している。しかし、それは価格下支え策の行き過ぎであり、住宅価格低下リスクを先延ばししているに過ぎない。中国の住宅市場は人口減少による需要の減退が不可避であり、それを無視して住宅開発を続ければ、いずれかの時点で供給過剰の問題が急速に深刻化する。

中国では想定を上回るペースで少子化が進んでおり、早ければ2022年に人口減少社会に転じる。2021年の出生数は前年比▲140万人の1,060万人と過去最低となる一方、死亡数は同+16万人の1,014万人と過去最高となった。自然増加分はわずか46万人で、自然増加率も+0.34‰(パーミル)に落ち込んだ。2016年以降の傾向はもはや変わらず、人口減少に転じるのは時間の問題といえる。

人口減少に伴う住宅需要の減退は、相続住宅の増加によって増幅される。1979年に一人っ子政策が導入されて43年が経過し、4-2-1の血縁構造を持つ家庭が増えた。4-2-1とは夫婦の上に4人の親が、下に1人の子どもがいることを示す。このことは、都市部では将来3戸の住宅を相続する子供が多いことを意味する。

住宅需要の減退が真っ先に現れるのは、内陸の中小都市である。都市化、つまり農村から都市への人口流入は今後も続くが、その多くは大都市へ集中するとみられる。国連のデータから都市人口規模に応じた都市化の進展をみると、人口50万人以下の小規模都市が都市人口全体に占める割合が2020年で38.4%と2000年から▲11.1%ポイント低下した一方、1,000万人以上の都市の割合は11.7%と+6.4%ポイント上昇した。都市化は人口流入が進む沿海大都市と人口流出が続く内陸中小都市という住宅市場の二極化を誘発し、後者では住宅需要の減退により、住宅価格が強い下押し圧力にさらされることになろう。
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