コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経済・政策レポート

アジア・マンスリー 2022年3月号

長期化する中国のゼロコロナ政策

2022年02月28日 関辰一


中国のゼロコロナ政策は、国内外の感染収束まで長期化するとみられる。この結果、2022年の中国経済は+4%台の低成長となる見込みである。需要の下振れに加え、供給制約リスクも警戒する必要がある。

■ゼロコロナ政策は国内外のコロナ終息まで長期化へ
中国では、わずかな感染も許さない「ゼロコロナ政策」が続いている。広西チワン自治区の百色市では2月7日、約360万人の全市民がPCR検査と自宅隔離を命じられたほか、不要不急の企業活動、学校や公共交通機関の停止、幹線道路の閉鎖といった事実上の都市封鎖が行われた。遼寧省葫芦島市も感染が拡大し、大規模な検査や厳しい外出制限が実施された。

このような中国の感染対策は世界基準と一線を画す。他国は総じて活動制限を緩和しつつあり、その背景として、オミクロン株による入院率や重症化率、死亡率が、従来株と比べて低く、厳しい活動制限のメリットが小さくなったことが指摘できる。一方、デメリットは増している。オミクロン株の感染力は高いため、政府が厳格な感染対策に固執すると高頻度で都市封鎖を余儀なくされ、国民に大きな負担を強いる。情報が統制される中国では、国民がこうしたウイルスの変容を必ずしも理解していないとみられるほか、オミクロン株に有効なワクチンや飲み薬の開発・普及が進んでいないことも、こうした中国の感染対策の背景にあると考えられる。

中国でも、一部の有識者がメリットとデメリットを考慮した政策見直しを提案しているが、見直しの機運は高まっていない。中国国営メディアは、世界各国の死者数の多さを指摘するほか、オミクロン株に続く変異株を警戒するよう呼びかけるなど、ゼロコロナ政策の必要性を引き続き主張している。国家衛生健康委員会は、1月22日の記者会見で「ごくわずかな人の正常な活動を犠牲にする代わりに、広大な地域の生産・生活を維持することは費用対効果が高い」という政府の判断を説明した。また、春節明けに香港で感染が拡大したことを受け、中国共産党の機関誌である人民日報は2月7日に「新型コロナとの共生は誤り」と香港の感染対策を強く批判し、中国政府は香港に検査要員を送り込むなど関与を強めている。

こうした状況を踏まえると、中国のゼロコロナ政策は国内外で新型コロナの流行が明確に収束するまで長期化すると考えられる。近いうちに国内外でオミクロン株の流行が収束したとしても、年内に新たな変異株が出現し、感染が再拡大する可能性は高い。その際、世界各国は新たな変異株に対して厳しい活動制限を見送り、ウィズコロナ路線をとる一方、中国は感染が発生した地域で厳しい活動制限を実施すると見込まれる。少なくとも習近平総書記の去就を含め、指導部の人事が決まる秋の党大会まで、ゼロコロナ政策を続けることで、感染の拡大と死者数の増加を回避することを最優先すると考えられる。

■中国経済はゼロコロナ政策により大きく下振れ
ゼロコロナ政策の長期化は、中国経済を下押しするとみられる。まず、個人消費の低迷が長引くと見込まれる。2021年11月からオミクロン株の流行が世界で広がると、中国政府は陝西省西安市や天津市、河南省鄭州などの地域で経済活動を厳しく制限した。また、人々が感染を警戒し外出を控えた。これらの結果、同年12月の外食を含む小売売上高(季節調整値)は、前月比▲0.2%と5カ月ぶりの減少となった。前年同月比では+1.7%と11月の同+3.9%から減速した。とりわけ、外食が同▲2.2%と前年割れとなるなど、サービス消費の落ち込みが大きい。春節の国内旅行者数と観光収入も、それぞれ前年同期比▲2.0%、▲3.9%と前年割れとなった。3月以降も、活動制限と人々の外出自粛により個人消費の低迷が継続すると見込まれる。

加えて、民間固定資産投資も、ゼロコロナ政策に伴う先行き不透明感から減速する見通しである。中国の経営者はゼロコロナ政策による厳しい活動制限に怯えていると報じられている。事業を展開する地域で感染が発生すると、直ちに設備稼働率を制限されかねない状況のなかで、企業の投資マインドは悪化している可能性が高い。
 政府は、景気・雇用の安定に向け、インフラ投資を大幅に拡大するものの、ゼロコロナ政策による景気下押し圧力を十分に穴埋めできないとみられる。昨年末からゼロコロナ政策に伴う活動制限が強化された一方、地方政府の多くは投資拡大により2022年は+5.5%以上の成長を目指すと表明した。例えば、人口1億人の河南省は、高速鉄道、発電所、水利、工業を重点的な投資分野に、2022年の固定資産投資を前年から+10%拡大することで、7%成長を目指す構えである。3月の全人代では、全国の成長率目標は+5.0%以上に設定されるとの見方が多い。もっとも、GDPに占める個人消費と民間固定資産投資の割合は、それぞれ38%、24%である一方、インフラ投資は12%にとどまる。このため、インフラ投資を政策によって大幅に拡大させたとしても、個人消費と民間固定資産投資の下振れを相殺することは難しい。

以上を踏まえ、2022年の実質GDP成長率は+4.9%と従来の予測から▲0.3%ポイント引き下げる。2023年は、国内外で新型コロナの感染が収束することを前提に、ゼロコロナ政策が解除されることで、景気が潜在成長率並みの+5.5%へ持ち直す見通しである。

■供給面でも世界経済の大きなリスクに
世界経済にとって、中国でゼロコロナ政策が続くことは、中国工場の稼働停止リスクが残ることを意味する。中国における工場稼働停止は、2020年前半を中心に世界的なサプライチェーンの寸断をもたらし、各国の製造業に大きな影響を与えた。例えば、自動車部品の輸出が滞ったことにより、日本や韓国、欧州の自動車メーカーが生産停止を余儀なくされた。スマートフォンやワイヤレスイアホンなどIT製品においても、中国で委託生産を行うグローバル企業の出荷が遅延した。マスクなど医療用品の輸出が滞ったことも世界的な混乱を招いた。

また、中国の港湾都市で感染が発生した場合の影響も大きい。中国の海運取扱量は世界1位である。2021年後半にかけて、世界の財需要は急回復したものの、中国の感染対策による港湾の処理能力の低下が、足元にかけて各国の海運業界や卸小売業、製造業に大きな打撃を与えている。

中国のゼロコロナ政策の長期化が見込まれるなか、中国における需要の下振れに加え、こうした世界を巻き込む供給制約リスクにも警戒する必要があろう。
経済・政策レポート
経済・政策レポート一覧

テーマ別

経済分析・政策提言

景気・相場展望

論文

スペシャルコラム

調査部Twitter

経済・政策情報
メールマガジン

レポートに関する
お問い合わせ