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次の世代の「おひとりさま高齢者」支援を考える

2022年01月12日 辻本まりえ


 「周没期」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。また、「周没期」と聞いた際に、どのようなことを想像するでしょうか。「周没期」とは、亡くなる少し前から亡くなった少し後までの期間を指す言葉で、周産期(妊娠・出産・産後の一連のプロセスを包含する期間)になぞらえ、生前・死亡・死後のプロセスを包括的にとらえようとする用語です。※1 
 少子高齢化が進み、単身世帯が増加していくこれからの社会では、この「周没期」にある高齢者をどのように支援していくかが、大きな課題となります。

 単身高齢者(65 歳以上)は、1990年には 162 万人(男性:31 万人、女性:131 万人)でしたが、2015 年には 593 万人(男性:192 万人、女性:400 万人) となりました。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、単身高齢者は今後も増加し、2040 年 には 896 万人(男性:356 万人、女性:540 万人)に達するとされています。
 高齢者への支援は、医療や介護分野が担っていると想像されるかもしれませんが、例えば、身体機能の低下に伴い介護サービスを受ける場合、そのための手続きが必要になります。また、医療サービスを受けるための通院には、そのための交通手段を検討しなければいけません。公的な支援を受けるための準備や手続きなど、従来は、家族などの身近な人の手助けを受けながら進めていたことを自分一人で行う必要が生じます。さらに、本人の死後に必要なる、本人の葬儀、家や財産の処分などの手続きは、誰がどのように行うのかといった点も課題となります。

 日本総合研究所では、周囲との人間関係の希薄化や家族の小規模化に伴い、必要な支援を身近な人から受けられない高齢者を「おひとりさま高齢者」と命名し、おひとりさま高齢者の課題について、地域で支援する体制や仕組みの検討を目指し、「SOLO Lab(SOcial connectivities for LOcal well-being Laboratory、ソロラボ)」を2021年11月に立ち上げました。「おひとりさま高齢者」の自律的生活支援の研究会を設立
 SOLO Labでは、地域における自治体・支援団体・民間サービス・住民の協働と、高齢者の生活に関する各種情報の効果的な活用や連携方法を検討していきます。

 これまでは、「年を取ってからは、家族に支えられながら暮らす」ことや「高齢者の課題は家族が対応する」ことがあたりまえとなっており、社会の制度もそのような前提の上で設計されていました。しかし、世帯の形や住まい方が変わる中で、「高齢者が家族などの身近な人に支えられて暮らす」という前提が変化しています。おひとりさま高齢者の支援は、これらの変化を踏まえて考えていく必要があります。
 ライフスタイルや世帯構成の変化は、全世代におきています。単身で暮らし続ける現役世代も増えつづけています。おひとりさま高齢者の支援について考えることは、今の高齢者のための支援ではなく、次世代の人々の暮らしを形作っていくことだと考えています。
 まずは、自分のことは自分でやる。できないことは、他人の手うまく借りる。逆に自分ができることはお互いに支えあうという、家族ありきではない社会の仕組みの実現を目指します。

※1「横須賀市の終活支援」にて発表。(日本政治法律学会第7回研究大会 死後事務委任—おひとり様時代の新しい終活)、北見万幸、第7回日本政治法律学会、2021年5月)


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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