2021年の世界経済を振り返ると、半導体不足などの供給制約を主因に年後半に回復ペースが鈍化した。ただし、年前半の急回復が効き、通年では+5.8%の高い実質成長率となる見込みである。
当面の世界経済を展望すると、供給制約が徐々に緩和するほか、各国で積み上がった貯蓄が消費を下支えするとみられるなか、回復傾向は続く見込みである。もっとも、政策効果の剥落、緩慢な雇用回復ペース、ワクチン格差などから、回復ペースが鈍化すると予想される。加えて、様々な下振れリスクにも警戒が必要である。
注意すべきリスクとして、オミクロン株などのコロナの感染再拡大のほか、①インフレ、②資産バブル、③過剰債務の3点が指摘可能である。これまでの物価高の主因であった供給制約が徐々に緩和に向かうため、インフレ率は徐々に低下するとみられるものの、再生可能エネルギーへの過度な移行によるグリーンフレーション懸念が新たな注目点になる。資産バブルについては、株価・不動産価格ともに世界的に高水準であり、引き続き警戒が必要である。とくに、これまでの空前の金融緩和が資産価格上昇の主因であり、今後の金融引き締めペースによっては調整が加速する可能性がある。また資産バブルについては、大手不動産企業の経営危機が懸念される中国の不動産市場について、日本のバブル崩壊と似た点も増えつつあり、日本化リスクにも留意する必要がある。過剰債務については、政府部門と企業部門が厳しい状況であり、今後、利上げ局面が到来すると、問題が顕在化する恐れがある。
中長期的なトピックスとしては、カーボンニュートラルとデジタル化が挙げられる。両分野とも各国政府が公的資金を投入して強化を図っており、世界的に成長戦略の柱となりつつある。カーボンニュートラルについては、今後、30年間にわたって投資額を3倍以上に増やす必要があるとIEAが試算しており、エネルギー分野にとどまらず、多様な分野を巻き込む形で拡大する見通しである。また、デジタル化については、半導体を中心に市場が拡大するとみられるほか、経済安全保障の面から国産化・輸出規制の強化が顕著となっている。今後は、自国生産もしくは経済社会体制が類似した国同士でのブロック化が進展する恐れがある。
当面の世界経済をみるうえでは、様々なリスクに備える一方で、カーボンニュートラルやデジタル化などの新たな動きにも対応していくことが持続的な成長の観点から重要となろう。
関連リンク
- 《世界経済見通し》JRIレビュー 2022 Vol.1, No.96
・世界経済見通し(PDF:1996KB)
・日本経済見通し(PDF:2127KB)
・関西経済見通し(PDF:2274KB)
・アメリカ経済見通し(PDF:2457KB)
・欧州経済見通し(PDF:1884KB)
・アジア経済見通し(PDF:1800KB)