2021年のアメリカ経済は、春先まで高成長が続いたものの、夏場に減速した。足元では、新型コロナの感染ピークアウトに伴い景気は持ち直しているものの、減速を招いた一因でもある供給制約は解消されておらず、インフレが加速している。
先行きを展望すると、労働市場では、働き盛り世代を中心に職場復帰が進むことで、深刻な人手不足は緩和に向かう見通しである。足元で転職活動の活発化とともに高まっている賃金上昇率は、労働供給の増加により求人が充足されるにつれて、失業率に見合ったペースに落ち着いていく公算が大きい。
個人消費は、コロナ禍で積み上がった過剰貯蓄の取り崩しや株価・住宅価格の上昇に伴う資産効果などに支えられ、堅調に推移する見通しである。個人消費回復のけん引役は引き続きサービス消費となるものの、財消費も底堅さを維持する見込みである。
住宅市場では、金融政策正常化に伴う金利上昇や供給制約の緩和に伴い需給バランスが改善することで、住宅価格の上昇ペースは鈍化する見込みである。
インフレ率は、供給制約の緩和などに伴い、2022年後半にかけて徐々に低下に向かうものの、家賃による押し上げもあって年末時点でも2%を上回る見通しである。2023年のインフレ率も2%をやや上回る推移が続くと予想している。
金融政策については、FRBが2022年半ば以降にゼロ金利解除に動くと予想している。もっとも、当面は緩和的な金融環境が維持されることで、景気が腰折れすることはないとみられる。
財政政策については、これまでに実施された大規模な経済対策の効果が減衰していくものの、2021年後半に打ち出された2つの投資法案による財政支出拡大がそれを一部相殺する形で、景気下支えに作用する見込みである。
以上を総じて、供給制約が徐々に緩和に向かうとともに、インフレ率が落ち着きを取り戻すことで、2022年の実質GDP成長率は4.0%と、高めの成長ペースが続くと予想する。負のGDPギャップが2022年央頃に解消することで、2023年にかけては2%程度とみられる潜在成長ペースに向けて減速していく見通しである。
リスクシナリオは、供給制約の長期化などにより高インフレが持続するケースである。この場合、FRBは金融引き締めを急がざるを得なくなり、結果的に景気をオーバーキルしてしまう可能性が高まろう。
関連リンク
- 《世界経済見通し》JRIレビュー 2022 Vol.1, No.96
・世界経済見通し(PDF:1996KB)

・日本経済見通し(PDF:2127KB)

・関西経済見通し(PDF:2274KB)

・アメリカ経済見通し(PDF:2457KB)

・欧州経済見通し(PDF:1884KB)

・アジア経済見通し(PDF:1800KB)
