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JRIレビュー 2022 Vol.1, No.96

欧州経済見通し

2021年12月29日 井上肇栂野裕貴


ユーロ圏経済は、2021年4〜6月期、2021年7〜9月期と急回復を遂げたものの、新型コロナの感染再拡大、長期化する供給制約、天然ガスをはじめとするエネルギー価格の高騰という三つの逆風を受けている。もっとも、2022年には、こういった消費への下押し圧力が徐々に弱まることに加えて、企業による投資も回復すると見込まれるほか、ワクチンや治療薬が域内外で普及することによりインバウンドを中心にサービス輸出も持ち直す見通しである。

政策面では、ECBがPEPP(パンデミック緊急資産購入プログラム)終了後も緩和的な金融環境を維持することや、EUの復興基金による資金供与の本格化が景気を下支えする見込みである。復興基金は、短期的に景気を下支えするだけでなく、中期的にEUの成長戦略「欧州グリーン・ディール」の推進力となることが期待される。

イギリスでは、Brexitに伴う労働供給制約を受けて賃金が急上昇しているため、インフレ率が中期的に2%を上回って推移する見通しである。これを受け、BOEは2023年にかけて利上げを進めていくと予想される。

以上を踏まえ、景気の先行きを展望すると、ユーロ圏経済は、ワクチン普及や供給制約の緩和、エネルギー価格の落ち着きによって個人消費の回復傾向が持続することに加え、財政金融政策による下支えを受けるため、2022年も高めの成長ペースを維持する見通しである。2023年には負のGDPギャップの解消に伴い、潜在成長ペースへ向けて減速すると見込まれる。イギリス経済は、ユーロ圏と同様、2022年に高めの成長ペースを維持した後、2023年には潜在成長ペースへ落ち着く見通しである。

リスクとして、脱炭素へ向けた取り組みが急進的であるがゆえに、「グリーンフレーション」が生じて家計消費や企業収益が下振れる可能性がある。また、2022年4月に行われるフランス大統領選挙で極右候補が勝利した場合、欧州統合深化に向けた足並みが乱れ、欧州経済全体にも悪影響が及ぶリスクがある。
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