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リサーチ・フォーカス No.2021-039

欧米金融機関によるビッグデータ・ドリブン・リサーチとわが国金融機関に求められる取り組み

2021年11月30日 野村拓也


近年、金融機関において、AI や機械学習によるビッグデータ分析を業務に活用する動きが広がっており、とりわけ、欧米ではリサーチ業務の付加価値を高める観点から、ビッグデータを活用した調査活動(「ビッグデータ・ドリブン・リサーチ(以下、BDDR)」)を幅広く展開。

欧米金融機関が取り組むBDDR は、(1)マクロ経済動向分析、(2)企業業績・産業動向分析、(3)指数開発に大別可能。具体的には以下の通り。
マクロ経済動向分析:スペインBBVA や米JPMorgan Chase は、顧客のカード決済情報や預金情報、ローン情報を基に、消費・投資や所得・支出の動向等を分析。両行共に、公共の利益を追求する観点から、自然災害や各種政策等の経済的影響を算出して、政策を提言。
企業業績・産業動向分析:米Goldman Sachs Asset Management はカード決済情報や位置情報等から企業業績を予測。米Morgan Stanley はアナリスト・レポートの売買判断に係るテキスト情報を分析。両社は、調査結果を運用パフォーマンスの最大化に活用。
指数開発:スイスUBS やカナダRBC は、社内外のデータを活用し、航空会社の運賃動向、アジア主要空港の活動量など、多様な指数を開発。同社のアナリストはそれらをレポート作成に活用。

旧来型のリサーチと比較して、欧米金融機関のBDDR は、カード決済や預金、ローンをはじめとした金融機関ならではの顧客情報を活用する点が特徴。また、社外から取得した各種テキスト情報やSNS 情報といった「非構造化データ」も利用。さらに、データ分析のための人材・インフラが必要なBDDR では、リサーチ部門内にデータ分析担当者を配置してエコノミストと連携させているほか、データ分析専門の組織(他部門・子会社)との協業を推進。

わが国では、ビッグデータの分析はマーケティング等において一定程度活用されているが、BDDR は普及していないのが実情。今後は、①利用するデータ範囲を拡大しつつ、②部門・組織間での協業体制を構築し、③社内でデータ分析人材を育成・確保できる体制を整備することが肝要。また、ビッグデータの分析を公共の利益に資する調査・研究に繋げるためにも、共同研究などの形での官・民・学の協業が重要に。


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