個人を取り巻く地域や、世帯、家族の縮小によって、高齢期に必要な課題解決に周囲の人からの手助けが得にくくなることが一般化すると予測できる。従来の支援方法では対象の把握や支援提供が十分にできないと考えられるため、新たな解決策が求められている。
課題解決が求められる範囲は生前から死後にわたっており、その分野も多岐にわたる。この範囲を「周没期」として定義し、そこで起こりうることを包括的にとらえる必要がある。
それぞれの課題ではなく、周没期に課題が生じる可能性のある個人に着目することで、あらかじめ対策をとることが可能になる。また、それによって個人の課題解決への関与を最大化できる。個人が周没期の対策に自ら取り組む動機を高めることが重要である。
周没期の課題解決は、変化を察知し課題解決を発意する「モニタリング機能」、実際の課題解決手段を手配する「活動の代替手段調達」に大別できる。従来のやり方では課題が大きくなってから発見され、「活動の代替手段調達」を優先的に行わざるを得ないことが多かったが、今後は「モニタリング機能」に重点を移していくことが有効である。
モニタリング機能には情報技術を用い、活動の代替手段の調達に多くの人が関与できるようなシステムが地域で構築できることが望ましい。そのためには、住民と自治体が主導して地域単位での概念実証を行いながら、実効性のある仕組みとしていくことが重要である。
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JRIレビュー 2021 Vol.11, No.95
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