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RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.21,No.83

過剰債務が映し出す中国の成長パターンの限界ー国有企業と住宅投機が脅かす習近平政権の足元

2021年11月15日 三浦有史


中国政府は、「暗黙の政府保証」に対する姿勢を改め、ゾンビ企業の清算を進める方針を示した。しかし、ゾンビ企業は依然として多く、清算は簡単には進まない。「暗黙の政府保証」は廃止の方向に進むのではなく、対象範囲を一時的に縮小しているに過ぎない。

デフォルトは、企業の過剰債務問題の解決の「出口」ではなく、解決に向けた長いプロセスの「入口」に過ぎない。ゾンビ企業に清算が進んでいるか否かは、銀行融資を含めた債務がどの程度削減されたかによって検証する必要がある。

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、実体経済への資金供給量を示す社会融資規模は、リーマン・ショック時以来の大幅な増加を記録し、企業の債務残高は2020年末にGDP比163.2%と、未踏の領域に入った。

「暗黙の政府保証」は社債だけでなく、銀行融資にも与えられている。デレバレッジが進んだとしても、債務は返済能力の低い企業に偏在しているため、過剰債務問題は解決には向かわない。資金調達の難易は政府出資の有無によって左右されており、過剰債務問題の元凶は国有企業だといえる。

中国の不動産開発における国有企業の存在感は希薄である。しかし、GDPに占める割合が高いなど、不動産開発業の浮沈は経済・社会に深刻な影響を与えるため、政府はデフォルトや破産を傍観するわけにはいかない。

不動産市場の過熱を受け、政府は不動産関連融資の総量規制と、債務削減目標を明示する「三道紅線」によって不動産市場に流入する資金を抑制しようと試みた。これは、一定の成果を上げた。

国有企業の過剰債務体質と住宅価格の高騰という問題が経済成長の足枷になることはこれまでなかった。しかし、経済に占める国有企業の割合が下げ止まってきたこと、また、不動産投資と住宅価格が右肩上がりで推移する好循環が期待しにくいことから、中国は想定を上回る成長下押し圧力に晒される。

中国が長期停滞に陥らないためには、国有企業の所有制改革の実施や不動産税・相続税の導入による住宅価格の抑制が不可欠である。しかし、所有制改革に踏み切る可能性は低い。政府は不動産税の導入に前向きであるが、税率が低いなど、骨抜きにされる可能性がある。
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