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ビューポイント No.2026-011

綻び見せる最低賃金制度と見直しの方向性

2026年06月09日 山田久


政府主導による積極的な最低賃金の引き上げは、近年の物価高騰や労働供給制約の強まりを踏まえれば、総じて前向きに評価できる。一方で地域間の引き上げ競争が見られるもと、中小企業の経営を圧迫し、使用者サイドの不満を強くしていることは無視できない。そうしたなか2025年度には、中央最低賃金審議会が示す「目安」を大幅に上回る引き上げを行う地域が急増する一方、実施日を大幅に遅らせるケースが続出した。

これまでのハイペースの最低賃金の引き上げは、企業の雇用需要の減退をもたらしている可能性があるものの、労働供給制約の強まりのもとで失業増にはつながっていない。一方、最低賃金の積極的な引き上げが低生産性企業の退出を促して生産性を押し上げる、との効果は限定的である。価格転嫁が不十分ななか、むしろ日本製品の品質力の高さを支えている中小・零細製造企業が廃業していくことで、中期的に産業基盤が失われていく懸念がある。

地域での目安を上回る引き上げは、2020~22 年度においては総じて、過小な目安に対して適切に水準を底上げしたものと考えられる一方、2025 年度に関しては、過大な上乗せにより、企業の求人が減退している傾向が窺われる。「政府主導の積極的な目標設定のもとで中央が目安を示し、各地域で最低賃金引き上げを進める」という従来の仕組みに、様々な綻びが生じている状況にある。

今後の見直しの方向性としては、①価格転嫁と生産性向上を同時に進める専門コーディネーター派遣の仕組み等中小企業支援策の再構築、②常設の第三者委員会創設を通じたファクト・データ重視の引き上げ額決定プロセスの見直し、③産業別最低賃金の積極的活用のための制度改定、が指摘できる。


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