2026年03月17日
各位
株式会社日本総合研究所
2025年度版プロアクティブ行動に関する調査結果を発表
~組織のサポートが管理職のリーダーシップ行動の維持・促進に重要~
株式会社日本総合研究所(本社: 東京都品川区、代表取締役社長: 内川淳、以下「日本総研」)は、企業の人的資本経営実践におけるキーファクターの一つである「プロアクティブ行動」が、個人、チーム、組織のパフォーマンスに与える影響、また従業員のプロアクティブ化を促進する要因を明らかにすることを目的として、2021年度(注1)、2023年度の調査(注2)に続き、全国の従業員5,000人を対象としたウェブ調査(以下「調査1」)を実施しました。
また、チームのプロアクティブ化において重要となる、ミドルマジメントのリーダーシップ行動を促進させる要因を明らかにすることを目的として、全国の管理職2,000人を対象としたウェブ調査(以下「調査2」)も新たに実施しました。
調査1および調査2について、神戸大学の服部泰宏教授の助言をもとに、先行研究のレビュー、仮説検証モデルの構築、データ分析などを行い、結果を取りまとめましたので発表します。
調査結果の詳細は、以下からご覧になれます。
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/pdf/company/release/2026/0317.pdf
■「プロアクティブ行動」「プロアクティブスコア」の定義
日本総研は、一般的に先見的・未来志向・変革志向な行動とされる「プロアクティブ行動」を、ビジネスにおいて利用可能なものとするため、「革新行動」「外部ネットワーク探索行動」「組織内ネットワーク構築行動」「キャリア開発行動」の4つの行動からなる構成概念として定義しています(注3)。これらの行動の実践度合いを、12の質問項目(5段階評価)で測定、スコア化し、これを「プロアクティブスコア」と呼称しています。このスコアは、事業ポートフォリオの再構築を支える自律的な人材、その育成に向けたKPIとして、先進的な企業に活用されつつあります。
■調査概要
【調査1】
調査期間: 2025年11月25日~11月28日
調査方法: ウェブアンケート
調査対象: 全国の従業員
調査人数: 5,000人
【調査2】
調査期間: 2025年11月21日~11月25日
調査方法: ウェブアンケート
調査対象: 全国の管理職(課長級)
調査人数: 2,000人
■主な調査結果(調査1)
調査1では、従業員のプロアクティブスコアの高さが従業員自身の行動や組織に対してどのような影響を与えているのかについて調査を行いました。
1.プロアクティブ人材の実態
ここでは、プロアクティブでもその反対でもない社員のプロアクティブスコアが3.0となるよう2021年度の調査時に設定した、5段階評価の設問による調査を実施しました。プロアクティブスコアが高いほどプロアクティブ行動の実践度合いが高いとしていますが、全回答者の個人プロアクティブスコアは、2023年度は2.89、2025年度は2.95と3.0を若干下回る水準にとどまり、各要素も含めこの2年間での変動はほとんどありませんでした(図表1)。
2.プロアクティブスコアと重要指標との関係
プロアクティブ人材と組織が重視する指標との関連も捉えました。指標として設定したのは、個人成果(実績)と個人成果(展望)のほか、多くの企業において人的資本経営の成果指標として採用されている、仕事への熱意・活力・没頭を表すワークエンゲージメント、人生全体として満たされ充実している状態を意味するウェルビーイングです。
調査1の結果、プロアクティブスコアが4.0以上の高群と2.0未満の低群では、各指標に約1.5倍から2倍もの差があることが明らかになりました。ウェルビーイングの指標においても有意な差が現れていることから、プロアクティブ人材を育成することは、企業だけではなく、従業員にとっても大きなメリットがあるといえます。
※各郡の差は統計的に有意。
3.プロアクティブ行動を基点とした成果創出モデル
図表3は、成果創出モデルに調査1の結果を当てはめたものです。成果創出モデルは、成果が創出される要因について、それぞれの影響度の高さを示すもので、各要因に記されている数字は影響度の強さを表し、+1を最大値、-1を最小値として数字が大きいほど影響度が高いとしています(注4)。0.20以上は、注目すべき要因であり、0.30以上はかなり重要な要因であるとされています。
階層3に位置する成果については、個人成果(実績)とチーム成果(実績)、チームで共有する成功イメージを示すチーム成果(展望)の3種類に分け、それぞれ階層2に位置する6種類の「成果を創出する要因」との影響度合いを調べました。
そこで見えてきたのは、成果を創出する要因のうち、「個人プロアクティブ」および「チームプロアクティブ」の影響度が、いずれの成果に対しても高いということです。
そのうち個人プロアクティブへの影響度については、「自分は目標を達成できる」と感じる「自己効力感」が0.25であったほか、「自分たちは目標を達成できる」と感じる「集団的効力感」が0.15、主体的にリーダーを支援し自律的に行動する能力や態度である「フォロワーシップ」が0.35に上りました。このことから、自分のことだけでなく、チーム全体のことを考えることができる視野を持った人材を増やしていくことの重要性が見て取れます。
また、集団的効力感のチームプロアクティブに対する影響度は0.23となったことから、組織としてのパフォーマンスを上げていく上で、集団的効力感をいかに醸成していくのかが重要であると考えられます。
■主な調査結果(調査2)
4.管理職のリーダーシップ行動を持続可能にする鍵
調査2は、リーダーシップ行動を持続的に発揮するために必要な管理職の思考様式を分析することを目的に、主観的な自己認識と客観的に状況を認識する力との関係について調査を行ったものです。管理職のリーダーシップ行動は、変革型、交換型、権限付与型、人的資本持続型、包摂型などに分類し、管理職のリーダーシップスコアとして数値化しました。
4-1. 管理職のリーダーシップ行動を促進する思考様式
リーダーシップスコアとチームプロアクティブスコアの関係を確認したところ、管理職のリーダーシップスコアが高いほどチームのプロアクティブスコアも高くなることが確認されました(図表4)。改めて管理職のリーダーシップ行動の重要性が浮き彫りになったといえます。
※各郡の差は統計的に有意。
その上で、心身ともに充実している状態を表す「中核的自己評価」(Core Self-Evaluations)については5段階で、状況を客観的に捉え意味づける行動である「内省的観察」(Reflective Observation)は7段階で評価した上でそれぞれを縦軸、横軸とし、管理職のリーダーシップスコアをプロットさせたところ、中核的自己評価と内省的観察がともに高い群のリーダーシップスコアと、ともに低い群のリーダーシップスコアの間に約1.5倍もの差がありました(図表5)。
心身が充実し、置かれている状況を客観的に捉えて次に活かしていく力がリーダーシップ行動を促進させることが分かる結果となりました。

※内省的観察→高群:5以上、中郡:4以上5未満、低群:4未満(7段階評価)
4-2.リーダーシップスコア区分別での変化への対応
管理職がリーダーシップ行動を持続的に発揮していくためには、日々起こる変化への向き合い方も重要です。
「変化に対する不安を乗り越えるための行動」として、「状況に応じて自分の仕事の進め方や考え方を柔軟に変えるようにした」を選択した管理職は、リーダーシップスコアの低群が19.5%であったのに対して高群では2.5倍以上の53.2%に上りました(図表6)。高群ほど変化や困難を前向きにとらえ、柔軟に対応する傾向にあることが分かります。
また、リーダーシップスコアの高群は、業務に必要な情報や知識を事前に調べて準備をしておくことや、関係者に対して積極的にコミュニケーションを図っていることなどでも低群の2倍以上の数値を得ています。

管理職のリーダーシップ行動を維持・促進するためには組織のサポートも重要です。管理職のリーダーシップスコアと組織からのサポートに対する認識の関係を調べたところ、リーダーシップスコアが高い管理職は、組織からの配慮や働きかけを感じるといった組織からのサポートを1カ月に数回は感じていることが明らかになりました(図表7)。
※4.0:時々感じる(1カ月に数回)、3.0:めったに感じない(1カ月に1回以下)
※高群と中高群及び低群との差は統計的に有意。
管理職が孤独感の蓄積と徒労感から脱却でき、中核的自己評価を維持向上できる環境をつくることが、リーダーシップ行動を持続可能にする鍵といえます。組織としては、管理職が変化することを恐れず変化を前向きに捉えられるよう、管理職を孤立させず、心理的安全性が保たれるためのサポートを行っていくことが重要です。
■本件に関するお問い合わせ先
【報道関係者様】広報部 山口 電話:080-7154-5017
【一般のお客様】リサーチ・コンサルティング部門 宮下、石山、佐賀、下野
E-mail:miyashita.taiyo@jri.co.jp
(注1)「プロアクティブ人材の実態に関する総合調査」(日本総研、アビームコンサルティング㈱ニュースリリース/2023年6月6日)
https://www.jri.co.jp/company/release/2023/0606/
(注2)「20,400人のデータを基にプロアクティブ行動から組織パフォーマンスにつながる因果モデルを解明」(日本総研ニュースリリース/2024年3月28日)
https://www.jri.co.jp/company/release/2024/0328/
(注3)プロアクティブ行動における各概念の定義
「革新行動」: 自身および職場全体の仕事を捉え直してみたり、やり方や手続きなどを変えたりして、自身の仕事を巡る環境を変えようとする行動。自身で仕事そのものを前向きに変える行動とも言える。
「外部ネットワーク探索行動」: 自身の知見向上のために、自身が所属する会社以外の人と積極的にネットワークを構築する行動。ゲートキーパーでありトランスレーターでもある。
「組織内ネットワーク構築行動」: 職場の上司や同僚をはじめ、組織内の様々な主体と良質な関係性を構築し、自ら関係者を巻き込みながら挑戦的な仕事を進める行動。
「キャリア開発行動」: 自身のキャリアを自身で描き、その実現に必要なスキル・知識を社内外問わずに学習して身につけたり、仕事の幅を自ら広げたりしようとする行動。
調査1、2では、上記概念に対する個人としての回答「質問文の主語が『私は』ではじまる」を個人プロアクティブ行動、チームに対する回答「質問文の主語が『私の職場では』ではじまる」をチームプロアクティブ行動と定義しています。個人プロアクティブ行動を測定する質問項目は以下のとおりです。
5段階評価で回答することでプロアクティブスコアが測定できます(1.全くそう思わない、2.そう思わない、3.どちらでもない、4.そう思う、5.とてもそう思う)
(注4)成果創出モデルの分析には、共分散構造分析を用いました。共分散構造分析とは、ある事象に対する因果関係を検証し、因果関係の向きと強さを検証するものです。

